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ヘンリック・ヴィブスコブ

PEOPLEText: Peta Jenkin

初めてヘンリック・ヴィブスコブの作品を見たのは、ベルリンにある薄汚れたクラブでのこと。夜は更けていて、とても遅く、突然私はダンスフロアの向こうの光景に目を奪われた。私の方に向かってきたその光景は、他でもない絡み合ったグラフィックパターン、マルチカラーのルービック・スネイク、私の漠然とした80年代の記憶を呼び起こすものだった。

そして私の耳元でささやいたのだ…。実はあまりよく思い出せないのだが、とにかくそれは見当違いのものだった。というのも、そのセーター男がまるで宇宙からの交信のように、光を放っているのが見えたからだ(彼を見たのはそれっきりである)。それがもし、そのだらしないフリースラインのセーターが持つ効果だとしたら、私はそれ以上のことが知りたい。


Henrik Vibskov Menswear 2005

ヘンリック・ヴィブスコブはデンマークの田舎で、草木に囲まれ、頻繁に海辺を散歩する家族の中で育った。若くしてキャリアをスタートし、10歳までは熱烈なドラム奏者、12歳までにはブレイクダンス、ドラム、ビートボックスでヨーロッパの行く先々にて賞を手に入れる。ポップな行動はまもなく影を潜め、デンマークのデザイン学校で本格的に学び、その後、伝統的なファッションハウスにての期間を経て、展覧会の一連に続く。そしてロンドンのセントラル・セイント・マーティンズ・カレッジにてファッションを学び、当然のごとくその時の作品は彼のバックグラウンドとなっている。卒業時までに、若きヴィブスコブは、アート、ファッション、フィルムなど様々な角度から追求すること、そして認知を高めることを目標と定めていた。

彼のクレジットリストは、ベックス・スチューデント・フューチャー・フィルム・コンペティションにて優勝した自主映画作品「The Monk」から、ロンドンのICAやニューヨークのサザビーズ・ギャラリーにおける展覧会、そして彼のファッションプロジェクトを発展するきっかけとなったデンマーク・アート財団からの奨学金など、とても印象的である。


Henrik Vibskov installation, Danish Design Centre 2004

彼は一体どうやってこなすのだろうか?多くのクリエイティブ制作が、1セット1回限りのランダムな黙想から生まれることは稀である。ヴィブスコブの場合、他の注目すべきデザイナー達と同じように、それはメッセージであってメディアではない。映像、ファッション、アート…。好きなものを選ぶといい。


Henrik Vibskov and his ‘Madsen’ installation

2006年の「マドセン」コレクションでは、アート・インスタレーションとメンズウェアラインから現れるストーリーを作り上げ、彼は2つのキャラクターにインスパイアされている。水銀と戯れる奇人のドクターと、異様にそのドクターに似たヴィブスコブの実生活の隣人である。その隣人は、ヴィブスコブの社会的実験の一部になり、結果的に中心イメージとして起用される。

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