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DING DONG!(ディンドン)アート・フェスティバル 2006

HAPPENINGText: Ayako Yamamoto

もう一人の日本人アーティスト谷口顕一郎は、ペンキの剥がれ落ちたところやタイルがわれたところなど何らかの原因で凹んでいる場所を、「凹み」と名付け、それをトレースし、PPやステンレスでその形を再現するという作品をつくっている。今回は会場のあるアルトナ地域で「凹み」を探し、その地図をつくっている。旅行者のためでもなく、車のためでもない、凹みのためのマップ。正面の壁に描かれた地図には番号のふったシールがつけてあり、その横の壁に、アーティスト自身が見つたもの、興味を持った来場者が見つけた「凹み」が、黄色のフィルムで切り抜かれ、昆虫標本のように飾られていた。「凹み」が形を持って飾られていると、なかなか面白い形をしていることが分かる。これから道を歩くときに、気になりそうな作品だ。近所から訪れた二人の男性が、壁の地図を指差しながら、『ここが俺の家で、ここがお前の家。ここにこの形があるのか。』と話していたのが印象的だった。


Kenichiro Taniguchi “Hekomi (hollow)”

オープニングのときは、3000平方メートルという広さには少々殺風景な感じを受けなくもなかったが、2週間たった今、もう一度訪れて見ると、それぞれの作品がそれぞれにパワーアップをしていて、活気溢れる場所となっていた。

オーガナイザーの一人キムは、『国籍を問わず、人との出会い、アーティストとの会話や、ときには地域のホームレスの人の協力も得て、この空間を作り上げてこられたことが嬉しい。』と微笑んだ。スタッフもアーティストも楽しんでやっていることは、この2週間後の発展ぶりでも分かるが、それに加えて、ここの場の空気がいきいきとしているのが、来場者にも伝わってくる。

友達と来ていたハンブルグの建築科の学生は、『ここにきたのは初めて。美術館と違い、体験しながら楽しめるのがいい。ソファーに座ってコーヒーを飲み、くつろぐこともできるし。最終日までにまたどのようにこの場所が変化するのか楽しみ。』と語ってくれた。

地域を巻き込んだアートフェスティバルとして、子供から大人まで楽しみ、何度でも訪れたくなるディンドン。地域参加型アートプロジェクトという言葉をよく耳にするようになったが、年齢層、客層が限られるものが多い中、企業製品のPRとアートが組み合わさって、みんなが楽しくなるイベントであったと思う。

DING DONG! Art festival 2006
会期:2006年4月6日〜28日
会場:Kaffeekranzchen&Hausfriedensbruch
住所:172-178 Grosse Bergstrasse, 22767 Hamburg, Germany
https://www.ding-dong.de

Text: Ayako Yamamoto
Photos: Ayako Yamamoto

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