ヨーゼフ・ボイス 没後20周年記念回顧展

HAPPENINGText: Yoshito Maeoka

ベルリンで現代美術を鑑賞すると言えば、まずは、ハンブルガー・バーンホフ現代美術館である。サイ・トゥオンブリー、ウォーホル、ラウシェンバーグからキーファーにいたる豊富な欧米の20世紀美術コレクションに加え、今なら戦後最大級の現代美術コレクションであるフリードリッヒ・フリック・コレクションからの企画展をあわせて鑑賞することができる。

この中でも特筆すべきはヨーゼフ・ボイスの常設展示である。脂肪彫刻、フェルト彫刻といった一連の大作、代表作が展示されており、来場者は常に彼の作品を見ることができる。

蛇足かもしれないが、彼について補足しておくと、現代美術史の文脈から見ると、政治の概念を芸術に取り込んだことが白眉であるが、様々なアクションを行った事により、当時の西ドイツに於いてはアートシーンのみならず社会的な影響力を持ったスター的存在であった。

例えばエコロジーという概念が広まったきっかけは彼のアクションにあると行っても過言でないし、その関係上後に“緑の党”から彼は国政選挙に出馬した(生憎当選にはいたらなかったが)。また、その思想イメージを具体化した作品そのものは、神話的/呪術的なモチーフと統一されたビジュアル・イメージがあり、一目で彼の作品と分かるスタイルを持っていた。

同美術館では、1986年に没した彼の死後20年を記念した企画展が始まった。フリック・コレクションからセレクトしたミニマル・アート展が9月から引き続き続いている事もあり、展示規模はいつもの常設展示に加えてその手前の二部屋を使用した小規模なものであった。しかし、特筆すべき点は幾つか存在する。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE