LOOKING.TOUCHING.SHREDDING.KNITTING

HAPPENING


8月30日の夜、私たちが「パラ/サイト・ギャラリー」に入ろうしていた瞬間、誰も何に期待するべきか、分かってはいなかった。外の空気はいまだに夏の暑苦しさを帯びていた。そのギャラリーのリニューアルされたメインフロアーは、今回のイベントのために、少しばかり暗い雰囲気に仕立て上げられた。このイベントについては、ギャラリーの管理人ですら、すこし毛羽立っていた。(管理人の名前はトービアス・ ベルガー、ドイツ、ニュージーランドを経て、新しく香港へ来た人物で、「パラ/サイト」のイベントの合間に、興行者たちがパフォーマンスをするのに喜んでOKサインを出した。)

“見て触って砕けてそして結びつける=相互作用”。それはロンドンから帰国したばかりの香港デザイナー、モヴァナ・チェンの理想である。「展示/パフォーマンス」を「体と服装;美術とファッションの関係ついての探査」と宣伝したこのイベントは、モヴァナが雑誌のページを利用して作った布地と、それを用いた服装を展示したショーケースをメインとしていた。彼女は街中からリサイクル用に置かれていた廃雑誌を集め、1ページ1ページになるように切り、途方もない量の紙片を繋ぎ合わせ、それから一本の紙片の幅を一センチ以下になるように、きし麺状に裂く。最終的に、その紙の繊維を使って、大変興味深く魅力的なドレスや、チュニック、セーターに仕上げるのだ。それらは有機的な匂いがして、輝きもあり、そしてとてつもなく肌触りがよい。しかしながら、彼女は作品を生かせるために、ファッションショー以上のものを求めようと決心した。

竿に大きな織物を優雅にかぶせた金属製のスタンドと、そのスタンドの元に置かれた長く大きな同じように金属でできてる塊、その二点をのぞいてはスペースはほとんど空に近い。聴衆たちはこぞって白い壁に立ち並び、プラスティックのカップから赤ワインを少しずつ啜りながら、壁に映し出されたモヴァナの先の作品の製作過程に関するプロジェクトビデオを見るのだ。彼女の織物の「プレミア」とともに、彼女が踊り場で細長い雑誌の切れ紙と戯れたり、自慢のチュニック(もちろんその隙間からはコットンシャツとスカートを覗けるのだが)を着てセントラル・ホンコンの近くでさまよっている姿などを、抽象的なクリップで映し出されていた。その自慢のチュニックはまだヘリを織っている真っ最中の作品で、プラスティックのリボンはまだ紙切れが添えられていた。それからビデオは止まり、眠りを誘いそうな軽やかでエレクトロニックな音楽が延々と流れた。そして私たちの意識はまだ部屋の中央に集中しているのにもかかわらず、ライトはさらに暗転した。

微妙に、そして次第に、私たちの嫌疑は正しいと証明された。織物を被さった例の塊が移動し始め、『中に人が入ってる!』と皆が囁きあった。塊はぴくぴくと動き、広げ、そしてゆっくりと立ち上がった。急に上昇したり、そしてまたしゃがみ込んだり、慎重にスタンドの端と竿の横幅を確かめてその頂点を、恐る恐る突っついたりした。ソナーのような正確さをもって、ほとんどすべての金属の頂点に触れ、そしてその度に可愛らしく元の場所に戻っていった。

その塊は直立し、小幅なゆれを続けながらうねるように進歩的に動いた。最初に裸の脚が現れて、それからスラリとしたひざと太もも、そして、黒い髪かざり、ゆったりとしたお尻、おぼろげなお腹、豊満な胸に力づよい腕、そして至福な女性の顔(無表情だが無上の喜びを感じ取れる)。それに黒光りするしなやかな髪。今や雑誌の織物でできたチューブから開放されたその生き物は(記憶の中で彼女は人間というより妖精のように思えた)浸して引き込んで歪めて広げた。水がテーブルの端から染み込むのと同じくらいゆっくりとした速さで、魔法のようだった。彼女は金属スタンドの周りを探検した。遊び心のある、もっといえば誘惑的なダンスを、さきほどと同じダンスを金属バーの表や裏で踊った。空間で軽く故障したかのような繰り返された。彼女は金属バーを踏み出した一歩に印を刻んみ、そして自らの眼前にある“王国”に“旅行”して周った。(実際は彼女が洋服棚の下かそのそばに立っているかの違いで、だが彼女の動きは、“内側”と“外側”をまるで二大陸に分けているかのように感じさせる)考えられないがしかし避けられもしない、彼女がふたたび衣を纏う前に・・・。彼女は金属を優雅に覆っていた衣服と戯れた。そしておそらく彼女の頭の上から脚の指先まで少しずつ、それを脱いでいった。それからあの壁を通り越し、ひたむきに外側の円に向かって歩き、観衆たちが彼女の最後の仕事を終わらせるのを手伝った。

最初は男が一瞬ショックを受けたように見えた。当然のようにアートギャラリーにある裸の木の精霊が袖を通していたプラスティックで鉤針編みされたチュニックを引っ張った。次に女が、二番目の衣服を引っ張った生き物に突っつかれた。彼女は私が立っていた角に近づいてきた。断固とした表情で、しかしながら弾ずむ柔肌を軽くたたくような愛をもって私をにらみつけ、そして私を引っ張った。さらに三番目と四番目のたぶたぶニットを、彼女が再び塊になるまでそれをつづけた。そして彼女は雑誌の織物のかんぬきが解き、初めて口を開いた。言葉がわっと飛び出し、まるで彼らを解せようともがいているようだった。昏暗な部屋で、一人裸で。『ンゴーッ』『ア!』『ヤ!』『ナイン』と、声は静寂という秩序が舞い戻るまで、増幅を続けた。やがて彼女は湾曲しながら元の住処、そうあの金属の中に、そして大気の中に、潜んでしまった。

拍手が鳴り止まぬうちに、ライトがふたたび灯された。あの女の人は立ち上がり、そしてお辞儀をし、名前はサッフロン・レウンと紹介した。現実が急にどっと押し寄せてきた。その生身のモデルは、この世界を前衛的な服装と、金属スタンドで魅力的に作り上げた。服を着た彼女は負けず劣らずと美しいが、しかし多くの人は、おかしなことに、表情が渦巻いていた。西洋美術の中において、裸婦はあまりにも普遍的な存在のために、私はむしろこのコンテクストの中でいかにして斬新に、そして刺激的に表現するかを理解していること、パフォーマーがいとも簡単にそれを効果的に作成した、という二つのことを賛美したい。モヴァナ・チェンの織物は魅惑的で先進的ではあるのだけれども、このファッションショーのもっとも魅力的な部分は、皮肉にも、あの鈍い光の中でゆっくり動いていた裸であった。


Looking.Touching.Shredding.Knitting

A project by Movana Chen and a team of London artists
パフォーマー:Saffron Leung
日時:2005年8月31日 7:30pm〜
会場:Para/Site Art Space
住所:G/F, 4 Po Yan Street, Sheung Wan, Hong Kong
TEL:25174620
info@para-site.org.hk
http://www.para-site.org.hk

Text: Samantha Culp
Photos: Movana Chen and collaborators
Translation: Rin Okada

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