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ヨマー・アウグスト

PEOPLEText: Ania Markham

もしあなたがこの陰気くさいオランダに住んだら、どうしてここが世界中の人を惹きつけるだけの魅力的な場所なのかということを疑問に思い続けるだろう。

私たち多くの移住者は、この小さな国が社会的にも経済的にもこちらから提案できることに満ち溢れているなどのいろいろな理由でここに移り住んだ。まぁ、間違いなく天気はセールスポイントではないが、クリエイティブという点から考えると、この国はデザイン関連のあらゆる出来事の中心のように思える。しかもここには、表現の自由における、長く威厳に満ちた歴史があると、この社会が維持しているそういった機会の多さと、開かれた姿勢から感じる。

前回に続き、今回もまた私はオランダに移住した人を取り上げることにした。しかも今回は、遥かかなたブラジルから来た人だ。私が初めてヨマー・アウグストに会ったのは、まさに真夏のことで、彼は一年のうちで一番適した時期にやって来たと思わざるを得なかった。そして、果たしてこの低地の国の冬が彼にどんな影響を及ぼすのか気がかりでならない。彼は本当に驚くべき人物で、彼の仕事に対する情熱には心を奪われる。

ヨマーはこの夏、ハーグの王立芸術大学でタイポグラフィーの修士を取るためににオランダにやってきた。彼はブラジルでハードに働き、お金をため、離職し、ついにここにやって来たわけだが、それは決して容易なことではないはずだ。2000年に、グラフィックデザイナーとしてニューヨークにしばらく移り住み、そこでフルタイムのデザイナーとして働いた。しかし、2002年に彼はブラジルのリオデジャネイロに戻り、そこで「Vo6.」という名のアートスペースをはじめた。“Vo6.”はポルトガル語で “あなた” という意味で、そこでは音楽や編集やファッションや、文化イベントを含む多岐にわたる活動を展開した。

2003年までに、ヨマーはROJOマガジン(バルセロナ)などのような出版に定期的に登場するようになり、そして国際美術展にも出展するようになった。イタリアのクライアント、インディアンジーンズとのプロジェクト「ROJO アートストーム」に参加し、バルセロナとベルリンで彼の作品が展示された。そしてこれをきっかけに、ヨマーはヨーロッパの味をしめた。リオに戻って、ヨマーは学生達とワークショップを開催し、さらに彼独自の様々なプロジェクトのコレクションを発展させた。

『今までずっとオランダのアート、デザイン、それからタイポグラフィーに憧れていた。今、ここにいるのはとても恵まれた機会だし、日々それを楽しもうとしている。急いではいない。私はゆっくり歩くのが好きだし、ここはそんなことができる国だ。旅行をしたり、異文化に触れたり、違う場所を見たり、同じ主題に対する違った意味に遭遇したりすることなど、ここでの全てが仕事をするうえでの刺激になる。』と、オランダの魅力について彼は語る。

ヨマーの作品は、ミクスドメディアを使い、幾重にも重なっているのが特徴。『いつも写真のことを考えてばかりいます。私の制作過程では、異なるテクニックをミックスするのですが、全てをただひとつのイメージ…あるいはイメージの連続で表現するという強さが好きです。最近変わってきたことと言えば、イラストやペイント、シルクスクリーン、コンピューター、カリグラフィー、タイポグラフィー、コラージュ、火や水などと写真を組みあわせることで、表現を深めようとしていることです。』

Text: Ania Markham
Translation: Ryoko Ogino

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