第7回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

そして、エンターテイメント部門においては、日本のある意味お家芸といえるゲームの出展やキャラクターものVFXなどが展示された。こちらは、普段の生活の中でも目にする機会は多いのではないだろうか。アニメーション部門、マンガ部門の作品もまた、アート部門などと比べ日本に限っては比較的身近にある存在だろう。

その中で、特に目を引いたのが、マンガ部門に出展されていた岡崎京子による、今回優秀賞を得た「ヘルタースケルター」であった。以前から、周囲の人間などから薦められたりして、気にはなっていたのだが、手にする機会が無かった。

しかし、今回の展覧会で目を通すことができるという機会に恵まれた。内容の程は別のものに譲るか、直接読むことをお勧めする。この作品を読み終えたあとは、よくできた長編映画1本半程を観たのと同じ位の疲労感と、自分が今ノホホンと生きている世界に対し、何か考えさせられてしまった。

他の出展されていた多くの作品にも共通していることだが、社会性のあるテーマを扱い、マンガというメディアを使い、読ませるということに、改めてマンガの魅力を感じた。マンガというポップな表現により、カチカチに固まった頭の中を柔らかくし、そこに、これもあり得るなと思ってしまう、強烈な現実感を注入されるのは、構えて読む小説などより、一層メッセージとして頭に印象付けられた。


「ザ・ディメンション・ブック 2002-2003」

ここ最近、この手の展覧会に行く機会が多くあり、少し食傷気味であったが、見終わった後他の展覧会とは違った独自性を感じた。映像やグラフィックなどに拘らない広範な分野をカバーする作品群、そして一番感じたのは、分かり易さというところにポイントを置いているところだろう。やはり、共感という面で、それがどれだけ高度なテクノロジーやテクニックを使っていようと、例えばボタンを押して何かが起こらならなければ、それだけで多くの人が興味を失ってしまうことだろう。

しかし、この展覧会に展示されている作品群は、どれも何かしらの共感を与えてくれるものだったし、笑いや涙、ちょっとした絶望など、人間の感情を含んだ、使い古された言葉だけど人間的なものだったからだ。かといって、他の展覧会が非人間的とは言わないが。とにかく、文化庁、観客、作家・作品が一体となった展覧会であった。


「マングローブ」力石 咲

入場無料という事もあり、会期中は沢山の人が訪れていて、年齢層も幅広く、文化庁という国の機関がこういったアートの分野に積極的に進出し活動していくことが、見る人の間口を広げ、一般的に目に触れることの少ない作品まで様々な人々に発表できる場を設けるというのは、アーティスト個人にとってもチャンスとなるだろう。

そして、官公庁主催の展覧会とは思えないほど、遊び心を感じた。係(学芸員)の人が対戦型ゲームの相手をしてくれるなど、会場はとてもリラックスした雰囲気であった。

単純に個人的には、無料でこういった質の高い作品を一度に目を通せるという機会は大変嬉しいものだったし、是非来年も訪れてみたい展覧会である。

第7回文化庁メディア芸術祭受賞作品展
会期:2004年2月27日(金)〜3月7日(日)
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL:03-3280-0099
主催:文化庁・CG-ARTS協会
museum@plaza.bunka.go.jp
https://plaza.bunka.go.jp/festival/

Text: Yasuharu Motomiya
Photos: Yasuharu Motomiya

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