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ダニエル・リベスキンド建築展「対位旋律」

HAPPENINGText: Kristy Kagari Sakai

今でこそ大規模なコミッションで有名なダニエル・リベスキンドだが、いつもそうだった訳ではない。ベルリン・ユダヤ博物館が建つ前まで彼は建築思想家(建築しない建築家)として知られており、自身のデザインを実現した事がなかった。だからこうして、世界的建築家として、彼が生まれた場所で自身の作品を総合的に集めた展覧会が開催されるのは、一周終えたようで適切に思える。モデル、スケッチ、写真や映像を含む14のプロジェクトが提示され、その中にはワールド・トレード・センターの為のプロポーザルも含まれているのだが、私にはその周りを取り囲む「小さな」作品が面白かった。

ベルリンの印象的な焦点であるポツダム広場や、不幸な目障りなものが、あなたの視点でリベスキンドの元でどのようになるかを考えるのは、興味深いことだ。最終的に受け入れられなかった「アウト・オブ・ライン」と呼ばれる彼のデザインは、意義深いオープン・スペースを10個の「パズル」の破片の間に縫うというもので、これらの「パズル」はポツダム広場に眠っている記憶の欠片に由来している。彼はそれを「絶対的な無の稲妻」と呼んだ。

70年代、80年代にリベスキンドは建築上の空間に対しての考えを表した二つの図面の技法、「マイクロメガス」と「チェンバーワークス」を生み出した。幾何学に基づいているマイクロメガスは一味違った青写真にも見え、チェンバーワークスはリベスキンドの生い立ちに深く根ざしていて、今でも作品に大きな影響を及ぼす音楽と建築の連関を探っている様だ。リベスキンドの劇的で幾何学的に複雑な建築はここから発展しているのかと感心し、彼の想像が図面から建物に実現されていくのが面白かった。

北帝国戦争美術館フェリックス・ヌスバウム美術館など有名作品の展示を含む600平米のスペースを過ぎ去ると建築から一歩離れたスペースがあり、そこではフェルディナン・トイブナー監督のフィルム・インスタレーション「建築との対話」が上映されている。まだ何も置かれていないユダヤ博物館内で、サシャ・ヴァルツの振付でダンサーたちがリベスキンドの建築との対話を繰り広げるという作品だ。

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