アイコ・ディンクラ

PEOPLEText: Ania Markham

アイコ・ディンクラは、実に美しい服を創造するファッションデザイナーだ。しかし、彼をその言葉だけでくくってしまうのは、どこか違う。アーティストと呼ぶのがいちばん正しいだろう。ファッションとアートの垣根を超えた彼の作品は、もはや既存のカテゴリーでくくることはできない。

アムステルダム育ちの29歳の彼は、最近発表したコレクションで広く知られるようになった。その洋服は一見、異なる布地を重ねて作ったかのように見えるのだが、注意して見てみると、キラキラと光る薄いシリコンが重ねて作られているのが分かる。以前、ポストパニックで制作した、「リガヤ」というミュージックビデオのコスチュームデザインを手掛けてくれたというつながりもあり、今注目すべきアーティストの一人である、彼の話を直接伺うことができた。


© Aico Dinkla

『僕は、コロンビア生まれなのですが、オランダ人の両親に養子として引き取られ、オランダで育てられました。しかし、常に自分のルーツはコロンビアにあると感じています。妹のイェフケは、オランダ人の両親の元に生まれた子で、僕とは全く似ていなく、背が高くブロンドという、典型的なオランダ人です。』

アイコと、彼の妹であるイェフケの特別な関係が浮き彫りになっているのは、ユトレヒト美術館で現在開催されている展覧会に限らず、アイコの作品はイェフケの存在なしに語れない。彼は常に、イェフケをモデルにして作品を制作していたそうだ。そして、彼女はプロのモデルになり、彼はファッションデザイナーになった。彼は、『イェフケは僕のミューズ(女神)だ。』と語る。これまで彼のコレクションは、順調に賞賛を獲得し、ファンを増やしてきた。そして彼は今、方向転換の必要性を感じている。


Bird top and pink skirt and belt © Aico Dinkla

アイコは、アムステルダムのファッションアカデミーで、テキスタイル・デザインを学んだ。そこで、あのシリコンのアイディアが生まれたのだそうだ。皮膚をテーマにした課題が出た時に、彼はオゾン層からインスピレーションを得、それが皮膚に与える影響についてあれこれ考えていた。そして、何か特殊な効果を作りたいと考え、様々な素材を実験的に試し始めた。ある日、ストッキングにシリコンを注いでみた時、これだ!と感じたのだそうだ。


Photo: Saira van Essen © Aico Dinkla

彼の洋服は、香港を始め、ロンドン、アムステルダムと、主にクラブ向けの店を中心に成功を成し遂げた。そんな彼の作品は、アシンメトリー、ミニマル、未来的、ロマンティック、演劇的、クラシック、モダン、ポストモダンなど様々なスタイルを包含する。しかしまた同時に、ユニークで印象的な素材は、この多様性を強く結び付ける力を持っている。

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