ピーター・ドイグ

PEOPLE

フランセスコ・ボナーミ(シカゴ現代美術館の現シニア・キュレーター)が、健康的なビジュアルダイエットにとって、ペインティングは栄養学的な成分であると言ったのは、数十年前の事。画家であろうと、あるいはアーティストやデザイナーであろうと、とにかく新しいテクノロジーやペインティングに打ち込んでいる場合、ペインティングはクリエイティブ・アートにおいて、永久的に珍しいとされるものに相反するように、再生するということと、伝統という優位をデモンストレーションしていることになるというのだ (ボナーミのエッセイ「ビタミンP:ザ・サウンド・オブ・ペインティング」、フラッシュ・アート・マガジン 173号より)。


ペインティングに関するディスカッションでは主に、機械的な再生に関する仮定の対比が中心的な話題になっている。特に、写真のフォームにおいてはこれはよく考慮される点。もし、ユニークなアートオブジェクトが商品として考えられた場合、やっかいなエリート思考の高いアートの世界を効果的に害することにつながる。しかしペインティングは、伝統的なフォーム内で人民主義的な作風を具体化できる、という可能性において、驚くべく弾力性を見せつけたのだ。

象徴的な可能性として広く知られているのは、村上隆のペインティング作品の数々である「スーパー・フラット」ではないだろうか。これらの作品では、18世紀の日本のマンネリズムと、現代のアニメや漫画文化の間にあるスタイリスティックなコネクションが表現されている。(村上隆著「Super Flat」「A Theory of Super Flat Japanese Art」広告批評出版を参照)

現在ジ・アーツ・クラブ・オブ・シカゴで公開されている、スコットランド出身のピーター・ドイグの作品は、意図するところを見事に、そして効果的に転回させているものばかり。村上氏の技術は、現代的なコンテンツを注入することで古いフォームに再び命を与えているのに対して、伝統的な題材を扱ったドイグ氏の作品「ゼイ・アー・オールモスト・オール・ランドスケープス」では、さまざまなスタイルを通じて新しい命が与えられている。そしてまた定期的にスタイルに変化を与えること、そしてその技術が、20年後でも想像できるものであるものだからこそ、アーティストは、伝統や注目を集める文化を適度に自分の作品に取り入れ、独自の作品を作り出しているのだ。

ジ・アーツ・クラブで27点の作品を紹介すると言うと、ドイグと同じく、90年代に登場したショーン・ランダースやリチャード・ビリングハムの芸術で見られるような、ニュアンス無しに落ちぶれた状態を言っているように聞こえる。例えば「GASTHOF ZUR MULDENTALSPERRE」(2000〜2002年)という大きな作品では、演劇で使われるような口ひげをつけた二人の人が描かれているのだが、この二人はその他の題名がない2作品でも登場している(両作品とも2002年のもの)。この二人は、道化師のようなコスチュームに身を包んでおり、カラフルな壁を背景に佇んでいる。そして木は、さらっとソフトなタッチで描かれており、モダニストの伝統における、長い歴史やきわめて抽象的な風景画において、通り過ぎた多くの物事は、悲しい冗談よりもつまらないものである、ということを無意識に示唆しているのだ。この皮肉的なセンスは、素晴らしく情緒的な平凡を呼び出しており、ドイグの作品を通じて主張されている。覆いかぶさるような感覚は、ペイントされた表面にだけに現れ、そこから私達はビタミンを摂取する。そして今こそ、私達はちょっと休憩を取り、自分だけの時間を楽しみリラックスする時なのだ。

今回紹介したアイディアはどれも、新しいものではない。しかしドイグは、この種の「90年代のポストモダン的な、やや落ちぶれた状態でありながらも、新たな進歩」を擁護してくれるような、群集の中から秀でた存在になる為に、登場したと言ってもいい。彼の大きな作品は、見る人の目を本当に楽しませてくれる作品。その鮮やかな色、そして不鮮明で半分しか覚えていない夢のような絵が、見る者を引き付けるのだ。ドイグは通常、キャンバスを横断するような、斑点を作るような水気の多い色を垂れ流したりする。そのような、カビのはえたかのような見た目だからこそ、私達が今見ているものは、主観性、思い出、そして形式的な仲裁というレンズを通して混乱を起こし、歪められるのだ。
これはスマートで、良いペインティングとされるものだ。そして、このメディアのアプローチや認識を考慮しているものとも言える。しかしその目的のために、単に偽ったわけでは決してないのである。

Peter Doig Exhibition
会期:2003年1月27日〜4月12日
会場:The Arts Club of Chicago
住所:201 East Ontario Street, Chicago, Illinois 60611 USA
TEL:+1-312-787-3997

Text: Matt Smith from Clean Magazine
All Images: Courtesy of the Arts Club of Chicago

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