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第16回 シンガポール国際映画祭

HAPPENINGText: Fann ZJ

毎年多くの人々が、その開催を楽しみに待つ映画祭が今年もやって来た。今回で16回目を数えるシンガポール国際映画祭では、多種多様な映画を紹介することで、幅広いオーディエンスを対象としている。映画大好きっ子ならば、ビデオレンタルの常連客かもしれない。しかし今回の祭典では、世界40カ国以上から集められた300点を越す作品を紹介。その中には、シルバー・スクリーン・アワード、アジアン・フィルム、ワールド・フィルム、シンガポール・ショーツ、アジアン・デジタル・ショーツなど多くの映画祭で輝かしい賞を受賞した作品の上映もある。

ここシンガポールで活動する新進気鋭のディレクター、ロイストン・タンの作品「15」(2002)は、その中でも注目を集めた作品の一つ。これはよく問題視される、シンガポールの社会システムの中に生きる、3人の若者の姿を映し出した作品だ。世界各国で様々な賞を受賞したこのショートフィルム作品(第6回タイ・ショートフィルム&ビデオ・フェスティバルで最優秀ショートフィルム賞受賞、第15回シンガポール国際映画祭でスペシャル・アチーブメント賞受賞)は、普段はあまり目にすることが少ないシンガポール独特の風景を交えながら、刺激的な情景をとらえている。

地元のフィルムシーンの活性化を促進しながらも、今回の映画祭では、過去のシンガポールの映画最盛期にも注目。特に伝説のキャセイ・スタジオは、シンガポールの映画業界が最盛期だった頃に特別な存在感を示していた。50年代のシンガポールの映画業界はまさに、マリア・メナードとグレース・チャンが注目を集めていた時代。今回の映画祭では、彼女らが出演した作品と共に過去の名作が数多く紹介されている。

「ポンティアナックの呪い」(1958)は、メナードがポンティアナック(マレーシアで信じられている、出産の時に亡くなった女性の吸血幽霊)を演じている作品。美しい女性の幽霊が、夜中に男性や妊娠中の女性のあとをそっとつけるというホラー映画だ。

「マンボ・ガール」(1957)は、中国では重要なミュージカル作品の一つ。グレース・チャンが、彼女が持つ歌唱力を存分に発揮している作品だ。彼女が演じているのは、音楽を生き甲斐とする少女の役。しかし、彼女は里子であるという事実を知った瞬間から、彼女の人生の歯車は狂いだす…。本当の両親を探し求める旅が始まるのだ。

あの時思い描いていた未来が、今目の前にある。ショート・フィルムやデジタル・フィルムの人気や認識が高まる中、このような映画祭の開催は必然的である。シンガポール、マレーシア、フィリピン、タイ、そしてインドネシアといった国々で制作された様々なショート・フィルムを紹介する事は、ショート・フィルムを愛する人々にとっては、最高の喜びなのである。

過去の素晴らしい作品ばかりではなく、現代の作品も国際的なスケールで紹介する、この第16回シンガポール国際映画祭。誰の心にも深く刻まれる祭典になることだろう。

16th Singapore International Film Festival
会期:2003年4月17日〜5月3日
会場:Prince 1 Cinema
住所:#03-00 Shaw Towers, 100 Beach Road, Singapore 189702
TEL:+65 6296 2929
https://www.filmfest.org.sg

Text: Fann ZJ
Translation: Sachiko Kurashina
Images: Courtesy of Singapore International Film Festival Ltd.

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鈴木将弘
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