ニュー・タレント・コンテスト 2002

HAPPENINGText: Gisella Lifchitz

「ニュー・タレント・コンテスト」という、若手デザイナーを対象にしたコンテストがある。昨年の9月、ブエノスアイレス・ファッション・ウィーク(BAF)で開催されたコンテストだが、そこでは4名のデザイナーが優勝者として選ばれた。それから約3ヶ月。彼らのこれまでの経験、プロジェクト、ローカルシーンへの進出に対する影響について、話を伺うことができた。

昨年は、ローカルシーンでもかなり波がある一年だった。しかし、若手デザイナーのクリエイティブなスピリットは、予想を越える結果をもたらした。経済的な理由で材料も制限されてしまう現実。しかし、持ち前の忍耐強さが、まるでプロのアーティストが作ったかのようなデザインを生み出した。どのアーティストにとっても、もっともっと美しいものを作るというのは、共通のゴールなのだ。


Helga Diaz: Modern Baroque Style

どこにもないものを作り出す。それがどのデザイナーにとってもスタート地点だ。『それが必要だな、と思った時点で全てが始まる』というのは、ヘルガ・ディアス。

『買い物に出かけても、欲しいなって思うものは何もないの』。デザインに対する彼女のテイストは、すでに執念とも言えるもの。細部にまで上品さにこだわった、パーフェクトで動きがある洋服が彼女が求めるものだ。『みんなが嫌うものを探し出すことから制作をスタートするのが私流』と、彼女は誇らし気に言う。

マリアーノ・トレドをアシスタントに活動する彼女は、ブエノスアイレスではここ最近有名なデザイナーにまで成長した。『オーダーメイドの服特有の優雅さからは、学ぶことが沢山あった。私の作品は、かなりクラフト感のあるもの。どんなに細かい箇所も、自分で手をかけています。』

ブエノスアイレス・ファッション・ウィークで紹介された彼女の作品は、まさにその言葉通り。『14世紀の女性のコスチュームから、インスプレーションを受けました。その当時の優勢的な形(コルセットを基本とした)と、フレキシブ性をもたらす生地などの組み合わせが、この作品のアイディアです。』そう言う彼女の作品で使われているレースや刺繍は、肌の色やしっとりとしたバラの色に近いものばかり。

『ヌードというビジョンと、ピュアな女性の体を組み合わせてみたかった。』と、ヘルガはコメントする。今回このコンテストで優勝した4名の内、自身のブランドを持っているのは彼女のみ。これは、前回優勝を果たしたローラ・フェルナンデスに続くものだ。

そのブランドの名前は「NANDEZKLAN」。ブエノスアイレスの中ではファッションの街とされる、パレルモにある人気のショップでも扱われているブランドだ。誰もが自分だけの会社を作りたい、という女の子の思いを形にしたのがこのブランド。モダンでアンティークな作品が特徴。『情熱が私たちにエネルギーを与えます。だから私たちは眠らない。もし眠ったとしても、夢の中でさえもデザインをしてしまう。

デザインは常に私たちの気持ちの中にあるのです。』そう言ってヘルガは、もの作りへの自分へ課せられた責任について語ってくれた。彼女はこれからも、作り続けるのだ。

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