NIKE 公式オンラインストア

第6回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Tomohiro Okada


IDEO「Social Mobiles」

一方で、課題が見られるのがインタラクティブもののメディアアートだ。デジタルアート・インタラクティブ部門の大賞を射止めたのは、ロンドンのインタラクティブデザイナーであるクリスピン・ジョーンズが、IDEOでのプロジェクトとして作り上げたもの。「ソーシャル・モビリティーズ」というこのプロジェクトは、モバイルコミュニケーションを取り巻く人々のビヘイビアを風刺的に浮かび上がらせる、実際のGMS携帯電話を実装した、すなわち本物の携帯電話が作品である。


//////////fur////「His Master’s Voice」

携帯電話はこういうデザインがいいとか、PDAの提案とかを、デザイングラフィックスやモックアップで示すことで全てをやり切った感覚にある、日本のほとんどのアーティストと呼ばれる人々を尻目に本当に物として実現してしまった腕力が大賞をもぎ取ったのである。同様に、ペインステーションでお馴染みのケルンのアーティストグループ、//////////fur////の「His Master’s Voice」が優秀賞に入った。どちらも20代のアーティストたち。今回は同芸術祭に応募が無かったが、日本のクワクボリョウタを含め、生まれた頃からデジタルがあった世代がその感性を現実の物として、ソニーやフィリップスはだしに一人や仲間たちで作り上げてしまう芸術作品の時代の到来が示されたと思われる。

一方で、このようなかたちで創造力を実現できるアーティストとそのノウハウを持ちえていないアーティストとの差が大いに開くことが予見できる状況に直面していることが見て取れる。その準備が日本の多くのアーティストに存在しているかと言われれば、その厳しさすら認識されていないのではないかという欠落感を課題として浮き彫りにされているように見受けられた。

これら入賞作品を中心とした文化庁メディア芸術祭受賞作品展は、2月28日より3月9日まで、東京恵比寿のガーデンプレイス内にある東京都写真美術館で開催される。また会期中、協賛事業として昨年行なわれ本誌でも掲載された「ネクスト02」の03年版、アートデモ03も開催される。同芸術祭に関する情報は特設サイトで見ることができる。

第6回 文化庁メディア芸術祭受賞作品展
会期:2003年2月28日~3月9日
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-3-3 (恵比寿ガーデンプレイス内)
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会
協力:財団法人東京都歴史文化財団東京都写真美術館
https://www.cgarts.or.jp/festival/

Text: Tomohiro Okada

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE