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ワールド・ユースデイ(世界青年の日)2002

HAPPENINGText: Mikey Richardson

両腕の無い男性が革のベストを着て「ワールド・ユース」の結束について唄っている。彼は世界各国から集まった何千という若い旅行者達を前にしてステージに立っているのだ。見たところ、白い礼服にコーンのような形をした帽子をかぶった何百人という男性達がその群衆の中に道を作り、力一杯手を振っている。きっと彼等は司教だろう。もしかしたら司祭かもしれない。

私といえば、その群衆から2ブロック離れた自宅のソファーに冷えたビールとノートパソコンをお供に座っている。新しく買ったテレビで、ワールド・ユースデイ(世界青年の日)2002のオープニングイベントを見ているのだ。きっとこれは、私がトロントで見た中で一番すごい若物達の群衆だろう。窓の外からはざわめきが聞こえてくる。

今日、私は私の彼女を空港まで送って行った。それが午後1時の出来事で、その時ちょうどローマ法皇がバチカン市国から専用機で到着したらしい。私はカトリック教徒ではないけれど、もしローマ法皇と擦れ違ったりしたらどうしよう、等と考えると、何となく興奮してしまう。実際にはそのようなことはなかったけど。

何だかこれは、「ボーイスカウトジャンボリー」の巨大版のような感じだ。何千何百という健全そうな若者がバックパックで旅をし、母国の旗を降って歩いているのだ。ある者は既に無くなってしまった国のレアな旗を持ち、彼等の文化を象徴する服を身にまとっている。ものすごくいろいろな色が使われている帽子をかぶっている人を発見。奇妙に膨らんだズボンをはき、かなり細かい模様のシャツを着ていた。もしかしたらオズの国に居るのかもしれないと、一瞬思ってしまった。

旗以外のものは、よく目にするものばかりだ。見た事もない旗がいっぱいある。、実をいうと私は、高校生だった頃少し地理にはまっていた。それ故に知らないデザインを見る事は思い掛けない出来事だった。あれはどこの国のもの?あれは新しくできた国?私ってこんなに無知だったっけ?ソビエト連邦の崩壊は、旗デザイン業界に大きく貢献しているのではないかと思う。

交通渋滞は、何千人の人にとっては重要な事でも、部外者の私にとってそれは、交通渋滞でしかない。私の近所は最近、世界中から集まったカトリック教徒の人たちで溢れ返っている。どの道も通行止めになっており、当然だが家に帰るのも容易ではない。しかしその道路渋滞への怒りよりも、私は自分自身が嬉しそうな旅行者の群にむかって微笑みかけていることに驚いた。彼等はキング通りをどこかの国言葉で唄って歩く。騒々しいけど幸せな空間がここにはある。だからこのような変化は嬉しいものである。

それまでは全く無知だったのだが、ローマ教皇はどうやらとてもクールな人と思われているらしい。でも何だかそれは私にとっては奇妙な感じがする。「JP2!」と「JPが家に居る!」という聖歌が聞こえてくる。ある地元紙はこれに影響されたのか、「パパ・ポープ(お父さん教皇)が家に居る」という見出しをつけた。すごく変。巡礼者の多くがお揃いの黄土色と赤色のショルダーバッグをさげており、かなりかっこいい。ネクタイがプリントされたシャツを着た群衆も目撃した。もしかしたらこれは、60年代後半に3日間に渡って開催されたウッド・ストックのような非公認のイベントなのかもしれない。私にとってはローマ教皇がジミー・ヘンドリックスのようにロックしているのは到底想像できない。

トロントの街を世界各地の国旗を振り回し練り歩く群衆を最後に見た時はちょうど、ワールドカップが行われている時期で、第三者にとっては面白い見物であった。宗教的な見解からすると、何の争いもなく様々な国の人々が行進するのを見るのは、爽やかなものであったが、途切れる事なく鳴り響くラッパの音はうるさかった。

The World Youth Day 2002
会期:2002年7月23日〜28日
wyd@arcol.org
https://www.worldyouthday.org

Text: Mikey Richardson
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Mikey Richardson

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