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ネクスト 02

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

椿と森脇のプレゼンテーションの後、今回の本題ともいうべき、国際的な評価が生まれ始めてきたアクチャルなアーティストによるデモンストレーションが開始された。

最初に登場したのは、児玉幸子と竹野美奈子。芸術コースでありながら、工学の理解と実践が得られる、日本で数少ない大学院である筑波大学でルームメートだった2人は、昨年のシーグラフに出展、ワイアード誌で見開きのグラビアで取り上げられるなど、今、最もインパクトのある作品を作り出した2人である。

黒い磁性流体が外部の音に反応して様々な造形に変化する作品。一見するとイカ墨のスープのようなものが、音をたてた一瞬で菊の花のように尖形に華開く姿は誰もにとって驚きと、美しさを感じさせる。このシリーズにあるバンケット・テーブルの皿の上に磁性流体のスープが盛り付けられたインスタレーションは、人が近づくと「スープ」が変幻自在の造形を生み出すもの。その美しいびっくり感は、世界共通で、世界各地様々なところで持ちかけられる展示において、それぞれどういう反応をしてくれるのか興味津々。これからも科学のふるまいを用いた、作品づくりをして行きたいとアピールした。

次に、近森基と久納鏡子が登場。2人の活動から、「minim++」という新しい名前で活動することをデモした。近森と久納は、影を題材にした、インタラクティブ性のあるコンピュータ感を感じさせないインスタレーションが代表作。minim++になることによって、2人の属人性から離れた、様々なアーティストなどが関わりあう、芸術にとどまらない創造のプラットフォームができるのではとこれからの展開を「++」というキーワードでデモンストレーションした。おもちゃやインテリア、デザインなど、生活を取り巻くあらゆるものがメディア化してゆく中で、「++」なヒントを与え、息吹を与えるものがアートによるアプローチであると説明、今までのインスタレーションの経験を活かし、ただポップアップするだけではなくインタラクションのある絵本を作り出して行くという提案事例を出しながら、メディア化する生活環境でのリアライゼーションの領域に、メディアアーティストが貢献できる場があり、そのアイディアを持っていることをアピールした。

独特のフラッシュでの作品作りで、キヤノンデジタルクリエーターズコンテストに準グランプリとグランプリを連続受賞し、他にも数々の日本国内での同様のコンテストでここ2年受賞を続ける、宇田敦子。美大でインテリアを学ぶ一方、映画学校で自主制作を学び、デジタルムービーを志して情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に入った、他のメディア芸術家と異なる経験は、女性の日常生活の中にあるちょっとした物語を実写や手書き素材でFLASHを使い、ドラマやコメディーにする手法を確立し、日本的な情緒を持った世界のどこにも無い作品を作り続けている。宇田のデモは自身の作品集であるウェブサイトをナビゲートしながら、実際にそのドラマの数々を宇田の説明を聞きながら見てゆくシンプルなものであったが、それぞれのドラマを作り出した背景を語る宇田の語り口はまるで無声映画の講談ようであり、画面に展開する世界とインタラクションを見ながらどんどん惹きこまれて行く、全く新しいウェブ体験の面白さがデモによって発見されて行った。オーディエンスの満足度がデモの中で最も高かったように印象付けられるほどのはまりかたである。

自身をデバイスアーティストと名乗る、クワクボリョウタ。いつも行く場所のひとつが秋葉原であるというクワクボは、自宅を工房に一から組み立てて電子作品を作り上げるアーティストであるとともにアルチザンでもある。一つ一つの作品が、もはやプロダクトといってもいいくらい、デザインとしても洗練されているのと同様に、クワクボのウェブサイトは誰から見ても興味を引き立てるカタログとして機能している。このウェブサイトをベースに、今まで作ってきた作品や作品づくりの考え方をクワクボは展開した。手のひらサイズの大きさにLEDのディスプレイをつくりアニメーションが踊る、電子アクセサリー「ビットマン」(商品化済)など、無目的だけどかわいい、おもしろい、ものを作りたいという気持ちからアイディアが生まれ、自身の手で現実のものへとしてして行くという。それは、デバイスにとどまらず、ウェブ上でのプログラミングによる作品にもあらわれ、8×8のドット空間で何が描け、表現できるのかという、ミニマムなクリエイティブで遊ぶ参加型のジャバアプリ「ビットハイク」という作品に例えばなっている。ミニマムな世界への反映としてビットの俳句という名を冠したこの作品、やはり、クワクボはものを作らないと気がすまなくなり、結局、ポータブルなゲーム機やアーケードゲーム機型の作品にして展開を広げてしまったとのこと。さらには、TVのRCA映像端子に挿すと中に入ったビットハイク作品を見ることができる電池大のデバイス(特許申請中)へと展開して行くなど、面白さによるアイディアの連鎖が、実物のものとしてしまうのだ。その連鎖がみえる語りにオーディエンスがひきつけられっきりだった。

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