アルベルト・ザノン

PEOPLE


40代に足を踏み入れたばかりの、アルベルト・ザノンは、デザイン探究の情熱と20年以上の経験の強さを持った高品質なニットウェアの創造者。1986年に設立された「ザノン」だけでなく、1991年から様々なテーマに基づいた、アンダー35とエキシビションのもとで行ってきた、若いデザイナー向けの有名なコンペティションである「オポス」、そして、ブリッジファンドによる非営利の、カシミヤとヤクウールを使ったニットコレクション「ファイバー・チベット」をリードするにあたって、ビジネスアプローチよりも、最初にくるのは考え方だ。テキスタイルから、プロダクトデザインにいたるまで、常にハイクオリティ・デザインの名のもとにある。それらは、アルベルト・ザノンが喜んで言うように「マーケットの論理によってもたらされた特別な状況に提出する事なく、パーソナルな道に続く事からの、確かに望まれたマージナリティ」だ。ユートピア?多くの部分では、イエスだろう。しかし、ザノンのケースは、商業的な観点から見てもきちんと作用するユートピアなのだ。


Shawl with pockets, Fibre Tibet collection

高校時代から培われた情熱が、ニットウェアを中心としたテキスタイルを専門とした、様々なファッション・ハウスのアーティスティックコンサルタントの道へと彼を導いた。彼が1987年に、メンズ・ウィメンズの初めてのニットウェアコレクションのプレゼンテーションが行われるまでコンサルタントを続けた。そのコレクションは、現代の技術で柔らかな色に染められた、天然の繊維のみを用い、リサーチと実験の賜物である洗練された技術を持って制作され、深く考え抜かれた「控えめな」衣類のスタイルとして、特徴づけられた。デザインオフィスとショールームはミラノにあり、工場はビエラの近くの村にある。そこが、ザノンの源だ。

「私達のブランドは強いアイデンティティを持っています。」とアルベルトは言う。「そして、商品のクオリティについて確かな意識を持つ人達のためのブランドです。ハイファッションの世界での特徴は、コミュニケーションの点でも、強く姿勢が打ち出された個性の欠如の埋め合わせといったものが、ますます強くなってきています。我々のバイヤーは、出しゃばらない商品を求めています。気付く事はあまりないでしょうが、内側には、何かあるのです。アルマーニが売られているのと同じお店で、私達のブランドが展示されているとしても、要求されているアプローチは異なるのです。


Woman sweater of the Fibre Tibet collection, 80% yak and 20% wool

ザノンのショップウィンドーでも同じスタイルが見受けられる。ディスプレイには、ディスプレイの個性を際立たせ注目を集めるために、赤々とした絵がたたんでおかれているニットウェアと共にあり、蛍光灯がウェアの色とテクスチャーを照らして、彼等のスタイルをあらわしている。

オポスは、1991年にデザインの他の分野を探究したいという強い願いから設立された。アルベルト・ザノンの建築とデザインに対する愛情と、ミラノ郊外のインダストリアル・スペースで、ユニバーシティ・オブ・フロレンスで都市計画を教えている友達と話をするチャンスに恵まれた事から、始まった。

「私はいつも、郊外に興味を持っていました。私はいつも産業考古学が好きでした。」とアルベルトはいう。「この、大きなスペースを見つけ、このスペースで何かできないか、というアイディアを思い付いたのです。建築の分野で始めるのは、簡単な事ではありませんでした。コンタクトをとるべき知り合いがいなかったのです。私達は、デザインから始める事にしました。ファッションのデザインと何かを比較したいという、欲求があったのです。デザインのレベルでのアプローチの点から見ると、私の行ってきたデザインと、シーズンを持たない商品のデザインとの比較ということになります。逆説的に、プロダクトデザイナーは、ファッションと同様に、いまやトレンドを作り出すようになりました。アレシの商品ラインがその例ですね。


Unscrewer designed by Stefano Cardini, 2000

「プロダクトデザインの世界を知る事で、私の視野は広まりました。テーブルや椅子、その他の物を作るように、私の商品のディテールをつけています。私が衣類に取り組む事の多いためにファッションの世界ではたどる事の難しいアプローチを、素材のリサーチや確かな特徴など、長く続く物の中に見い出します。」

オポスの実験には、確実な報酬があります。また80年代の終わり、この都市が若い才能にあまり注目しなかったこともあり、オポスのエキシビション・スペースは、そうしたギャップを埋めたといえる。若いデザイナーのデモンストレーションに対して「新しいデザインの方向にハイライトを当てた提案を持つ、初めてのアンダー35コンペティションが素材の使い方や、環境への配慮、リサイクル、再利用、皮肉、どんな小さな物でも感情からくる考えなどを扱ってきたために、大きな期待もありました。こうしたシグナルをピックアップする事は、業界でも少ししかなく、10年以上経った現在でも、オポスのリサーチと提案を調査するプロデューサーはあまりいません。」「家具業界は、有名な人を信じ、リスクの少ない選択をする傾向があり、あまり配慮を持っていません。ビッグネームにバックアップされているデザインチームを持つ組織が形成されているのです。」


Tibetan yak

10年が経って、光景も変わった。若い才能は、いまや自分達の作品を見せる事のできる機会、アウトレットを持っている。初めてにしてもっとも重要な「サロン・サテライト・アット・ザ・ミラノ・ファーニチャー・フェア」とそのスペースは、コミューン・ディ・ミラノ・アット・アレンジャリオによって提供された。そしておそらく、プロダクションの世界では、こうしたデザインの若いスタイルは飽和状態にまで達しているのだろう。

デザインの世界で、デザインとプロダクションという観点においてアルベルト・ザノンは何を見ているのだろう?「若いデザイナーのための販路は、以前ほど見なくなりました。技術は流行です。したがって、素材に取り組むのはもっと難しいのです。アイディアが充分ではないのです。新しい素材と技術は、若いデザイナーには利用できません。少なくともイタリアでは。その事をオランダのような国で考えてみると、ドローグ・デザインは航空宇宙産業の素材を使うためのリサーチにアクセスできるようにしています。」「イタリアは実際、業界のジョイントの力においては停止状態にありますが、民間のイニシアティブや制度は、オランダやイギリス、スイス、ポルトガルといったヨーロッパの国それぞれのポジションを強めているのです。」あなたがこれまで「記録」してきたデザインのレベルの低下は、オポス・コンペティションの登録者にも表れていますか?「残念ながら、答えはイエスです。初めの頃にくらべると、心を捉える物も驚きのある物も少ないです。以前よりも、若い人達は刺激的ではありません。難しい仕事ではあります。『何人で作ったの?』と聞くので充分です。

ザノンによる、3年前に始まった最新プロジェクトはファイバー・チベットだ。コレクションは、昨年10月が初めての開催となった。実際のプロダクション設立をとおして、チベット遊牧民のコミュニティーをサポートし、経済的成長を支援することを目的として、ニューヨークのロックフェラー・ファンデーションに関連するブリッジファンドのイニシアティブのおかげで生まれた。このプロジェクトは、チベットの台地で産出されたカシミヤとヤクの繊維のみを用いて、メンズ・ウィミンズのニットウェア、スカーフ、ショール、ホームアクセサリーなどの、シングルシーズンのコレクションを開催した。ファイバー・チベットの収益金は、チベット遊牧民コミュニティー支援のためのプログラム発展に役立てられる。


Alberto Zanone (right) inspects Yaks in the Tibetan Plateau

「ヤク自体の売り上げで、チベットの遊牧民達をかなり助けています。このプロジェクトのマネッジメントが中国政府にゆだねられているにせよ、ヤクの毛が伸びれば、チベット遊牧民はヤクのキロ当たりの値段を高く交渉することができます。財団の介在は、チベット民族によって管理する小さな組織にもあります。すでに、生状態の毛の扱い、初めの段階、選定と洗いの段階などの組織が作られました。この投資は、チベット民族の存在する場所に対してなされています。」

ヤクは、この土地にとって本当に大切な資源だ。「5000年以上も家畜として飼われたほ乳類で、今日も人々が生計を立ててゆくのに最も重要な手段となっている。食肉、日用品、糞からは燃料も採ることができます。一方、あまり質の良くない毛は、ラグやテントなど彼らの住まいづくりに使われる。


Interiors of the Zanone showroom in viale Elvezia, Milan

「このアメリカの財団は、私の毛糸に関する知識とそれまで完成させた生の糸を使った商品をみて、私を巻き込んだようです。その民族の最も重要な資源は、ヤクの毛で、チベットの台地にで育ったこの動物の95%は、これまで搾取の対象になっていません。」「実際、どのようなコントリビューションしているのですか?」「繊維の収集や、セレクションに対する、いろいろな場所にいる動物が、それぞれの特徴とクオリティを持っている、という批評を聞いてもらおうと、チベットにいってきました。ヤクの糸は短いので、100%ではないにしても、中国でされているようなポリエステルとの混合はされない。それでも、他の繊維(ウール)を20%まで減らすことにしました。現在中国で作られている糸の、もとはチベットからのものだ。今、私達は、糸の段階から商品を完成させるというところまできました。私達は、デザインのパートに取り組み、医療のコレクションを行うことができました。そして、中心的な存在にあるショップで世界的に販売されています。

テキスタイルからデザインまで、共通しているのは「姿勢」です。クオリティを探究する人々から注目を浴びる、デザインの誠実なビジョン。「私にとって、クオリティとは直観と作品の出会いを運ぶことのできる感情です。」と彼は説明する。


Divatrona armchair by Paola Bonfante and Filippo Fantini, 1992

ファッションの世界ではとりわけ、見つけることの難しい材料・・・。「イタリアのファッションでは、人々は商品やコミュニケーションに高品質のものを見い出す。イタリアで作られた衣料は、世界をリードするものと位置付けられ、世界的なレベルでの質が求められている。ある商品に関する限りでは、たぶん他のたくさんの国で、素材や技量においては、同じくらい高品質のものが作られているだろう。イタリアンデザインで考えられるのは、質を保つということだ。それは、イタリアのデザイナーの作品とテキスタイルのクオリティが支えてきた。洋服の世界のビッグネームの多くが、外国人デザイナーをつかい、テキスタイル・カンパニーは中国、インド、東ヨーロッパといった国へと広がった。違いを生むのはデザインやコミュニケーションだ。

では、クオリティデザインの頂点という名をかかげている会社はどうだろう。デザインリサーチの点では、カッペリーニだろう。ファッションでは、上質の商品をもつ小さな会社がある。そのうちの多くは、残念ながら前面に出すコミュニケーションの力はない。プラダのようなビッグネームでは、ある商品ラインでは(革製品の)伝統を誇る品質を目にすることができるが、ニットウェアの場合のクオリティの良さは、コミュニケーションがうまくとられている戸いうことから生まれるのだ。

力点を置いたリサーチと実験が、デザインのクオリティをリードする。「技術に投資するのはとても重要だ。私達は、いつでもそれをやってきたのです。私達が取り組んだ最新のものは、(編者註:ミラノ、サイエンス・アンド・テクノロジー・ミュージアムに選ばれ、イタリアの中小企業による技術革新の可能性を示すエキシビションに展示された)新鮮で、軽く、呼吸でき、洗濯にたえる、男性/女性向けのコットン製品を開発したいと願い、何年もがんばってきたものです。糸づくりから始め、工場で特殊処理を施した素材を作りました。


Woman sweater of the Fibre Tibet collection, 80% yak and 20% wool

「糸は、私達の作品でとても重要なものです。デザインのコンテンツでは、ファッションで何が起きているかを考えることが良くあります。色や、ライン、得に女性服のコレクションでは。女性は、ずっと楽しむことができるものを求めています。広告以上に、色やラインは女性達を魅了するのです。メンズウェアのコレクションでは、それほど多くの変化は求められていません。商品は、2、3シーズンかけて完成するのです。」

会社が技術に投資するのは、経済的に難しいですか?「会社組織、商品コントロール、ディストリビューション、コミュニケーションといった、他の重要項目と『投資』のバランスをどのようにとるかを知らないと難しいでしょうね。言い換えれば、プロジェクトを管理できなければ、ということになります。」

Text: Loredana Mascheron from Domusweb
Translation: Naoko Ikeno

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