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サンフランシスコ・エレクトロニック・ミュージック・フェスティバル 2001

HAPPENINGText: Kanya Niijima

今年で2年目を迎える、サンフランシスコ・エレクトロニック・ミュージック・フェスティバルが、サンフランシスコ市内の3つのロケーションにて開催される。このフェスティバルは、そのストレートな名前が安易に連想させるような、いわゆる「ダンスミュージック」的なイベントとは、全くかけ離れている事をまず最初に述べておこう。

踊るためではなく、五感でセンサーする音楽。コンサートというよりは、むしろ無音なギャラリーにいる時のように、知覚を極端に敏感にさせるような環境。ただ単に「聴く」というより、音響をテストするラボに、自身を浸透させるような感覚により近い。流行やスタイルに流されがちなエレクトロニック・ミュージックの一般定義を超えた、フューチャリスティックな音響実験の数々を、じっくり堪能できるのがこのイベントの醍醐味である。

今年のフェスティバルでは、アメリカ国内、海外で活動を続けるサウンドアーティスト18名のライブパフォーマンス、オーディオ・インスタレーション、そして参加アーティスト達による講義を、4日間にわたってプレゼンテーションする。各々のコンポーザーが独自に創りあげた「音の美学」を元に繰り広げられる音響の世界は、一つのジャンルや枠にはまらないような、幅の広い表現法を示している。

例えば、雑誌ヴィレッジボイスにて、今日におけるベストコンポーザーの一人と称えられたカール・ストーン。初期アートオブノイズを思い出させるような彼の作品「Cooking Papa」は、 日本のテレビ/ラジオからの音声を、アップルのパワーブック上で荒くカットアップしたサンプリングのシークエンスだ。

一方、規則的なビートを無視した、フリースタイル的なアンビエントコラージュを得意とするジョン・ビショフ。ライブ・コンピューター・ミュージックのパイオニアとして25年以上にわたり活動を続けているビショフは、今回のイベントでオン/オフスイッチのみをベースにした音の合成を披露する。

日本で生まれアメリカで育ったアーティスト、アタウ・タナカの作品「Rail」では、自らの体に装着したバイオミューズ(電極によってパフォーマーの動きを関知するセンサー)を「楽器」として使用し、彼自身の肉体の動き一つ一つが、発信される音と映像をリアルタイムでコントロールする。まるで太極拳のように空中をさまようアーティストの手の動きが、インタラクティブにオーディオとビジュアルに変換され、ステージ上に出力される。

同じく日本出身のコンポーザー、ミヤ・マサオカは、医療機器、脳波測定モニター、そしてコンピューターに繋がれた琴を使用した新しい作品「Naked Sounds #2」をパフォーマンスする予定だ。混沌としたサウンドスケープの中で表現される東洋的な時間の流れが、彼女の作品には満たされている。

音響制作に対して、常に自発的な方向性をプッシュしていくこれらのクリエイター達は、ミクスト・メディアを主としたビジュアル・アーティストのように、まるで先例のない素材達の組み合わせで、新しいオーディオ・ランゲージを創りだしている。

尚、フェスティバルのウェブサイトでは、参加アーティスト達のサンプルMP3トラックをチェックする事ができる。イベント当日は、全プログラムをインターネットを通してウェブキャストも行う予定だ。

San Francisco Electronic Music Festival 2001
会期:2001年5月3日〜6日
会場:Cellspace, 7hz & Southern Exposure
http://www.sfemf.org

Text: Kanya Niijima

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