フューチャー・ファーマーズ
サンフランシスコを拠点に活動する、フューチャー・ファーマーズ。様々なニューメディアに作品を提供している彼女達、SHIFTでもいくつかの作品を見ることができるのでご存じの方も多いだろう。
現在日本に滞在し作品制作をしている彼女達に今月のカバーを制作していただいた。
まず自己紹介をお願いします。
エイミー:エイミー・フランセスチーニ。サンフランシスコから来ました。
サシャ:サシャ・マーグ。ドイツ、ハンブルグから来ました。
出会ったきっかけは?
サシャ:多分エイミーからのメールが最初かな。エイミーと仕事をしていた人と一緒に仕事をしていたこともあって、それでエイミーからメールが来て、サンフランシスコに来ないかって言ってくれたんだ。
エイミー:サシャにメールして、こう言ったの。「サンフランシスコに来てスターウォーズプロジェクトの仕事を手伝って欲しいんだけど、面白いプロジェクトにするって約束してくれる?」ってね。
サシャ:でも最初は、ただのインタラクティブなプレビューみたいな感じだったんだ。エイミーが僕にムービーを作ってほしいっていうことは分かってたんだけど、その時点では全然アイデアがなかったんだ。でもとにかくサンフランシスコに向かったんだ。
エイミー:サシャがサンフランシスコの私のスタジオに来た頃、私のルームメイトが「サシャは、エイミーが今でもファーム(農場)に行って仕事するんだと思ってるみたいだよ。」って言ってたんだよね。
サシャ:その場所は全然ビジネスっぽくなくて、本当にすっごくいいところなんだよ。
それで、NUTRISHNIAとスターウォーズの仕事を一緒にやったの?
エイミー:スターウォーズではものすごくたくさんの仕事をしたんだけど、3か月くらいかかったかな。
サシャ:いろんなゲームを作ったんだけど、彼等はあんまりクールなものは望んでなかったみたいだったね。
エイミー:なぜかっていうと、フィルムメーカーっていうのは元々は受け身の観客だった人達で、私達がすごくインタラクティブなものを作って見せても、「インタラクティブじゃないものにしてくれ」って言うの。彼等はクリックする必要はないから。
サシャ:きっと皆保守的なんだと思うね。
エイミー:メディアを怖がっているのよ。
サシャ:オープンマインドじゃないんだ。僕達ほどにはっていう意味だけど。きっと僕達がインタラクティブってことにクレイジーなんだと思うけどね。
仕事はいつもどうやって選んでるの?
エイミー:毎日メールや電話で仕事の依頼があるの。バカみたいなデザインをして大金を得たいと思っているなら、BOO.COMみたいなEコマースサイトの仕事はすごくつまらないけど、お金にはなると思うわ。でも、ちょうどアドビのウェブギャラリーの仕事を終えたばかりなんだけど、彼等は電話してきて、「もし興味あるんだったら、すごく面白いプロジェクトにしようとしているんだけど。ショックウェーブを使って、データベースを作りたい」っていうようなことを言ったのね。それで、もしそのプロジェクトを私達でできるんだったら、ぜひやりたいって答えたの。面白いプロジェクトを望むなら私達もやるってね。
サシャ:すごくラッキーでもあったよね。
エイミー:ええ、すごくエキサイティングだったわ。スウォッチがいろんなデザインエージェンシーに会いにサンフランシスコに来た際に私達のスタジオに寄ってくれた時も、会ってすぐに「ぜひこの仕事をやってほしい!」ってなったの。すごくビックリしたわ。だって会ったのもその時が始めてだったのに。仕事もすごく楽しかったし。
サシャ:僕達がやることを何でも信頼してくれたんだ。
エイミー:他のクライアントは、何を見せてもはっきりしないんだけど、スウォッチは「やりたいようにやっていいよ。クレイジーにしたかったら、もっとクレイジーにすればいいんじゃない」って感じだったの。
サシャ:それで「どう思う?」って。
エイミー:3パターンくらい見せたんだけど、彼等はその中から一番変なのを選んだの。「これだ」って。夢のようなクライアントだわ。
日本に来ることになったのは?
エイミー:たしか、以前のSHIFTのューチャーファーマーズインタビューの時に、「何でもやりたいことやっていいとしたら、何したい?」って聞かれて、「服のデザインがしたい」って答えたの。それで、サンフランシスコで開催したホールディングパターンズのエキシビジョンの写真を何枚か送って、「これを今企画中のウェディングパーティーで実現できるか?」ってなったの。もちろんできるけど、これはものすごくお金がかかるプロジェクトで、その概算をメールで送って、なんとか実現しようとしてくれたんだけど、結局無理で。それで、いろいろ話が発展して行って、日本に来てウェディングパーティーのためにインスタレーションとか服を作ってくれって言ってくれて、「日本でフューチャーファーマーズ・ワールドをやってくれ」って言われた時は夢のようだったわ。すごくビックリした。でもひとりじゃできないから、「じゃあ、一番頼りになる人も一緒に連れてくね」って言って、それはマイケルとサシャなんだけど、それでサシャに電話したの。
サシャ:僕はいつも電話を待ってるんだ。面白いことになるのは分かってるからね。
エイミー:日本に来る直前まで、さっき言ったスウォッチの仕事もしていたから、「スウォッチの仕事でもらえるお金で日本に行けるよ」ってサシャを呼んだの。
じゃあ、スウォッチの仕事は終わったの?
エイミー:まだ・・・。
サシャ:第一段階は終わったんだけど・・・。
エイミー:クリエイティブな方向性がいくつかあって、ちゃんとしたデザインっていうんじゃなくて、アイデアのショックウェーブデモみたいな感じのものをやったりとか。でも今は何とも言えないの。すごく気に入ってもらえたけどね。
いつもこんな感じで一緒に仕事してるの?
サシャ:ネットを通して仕事をすることもあるけど、でもそれはあんまり楽しくないよね。実際にひとつの場所に一緒にいる時の方がもっと楽しいよ。ネット上でも仕事はできるけど、全然別物なんだ。
エイミー:昨日の夜も一緒に同じ椅子に座って仕事したしね。
日本に来た感想は?札幌はどう?
サシャ:大好き!
エイミー:私も!
サシャ:みんなお互いを大事にするし、すごく礼儀正しい。そういう精神的な部分が好きだね。
エイミー:サンフランシスコでは、肉体的にも精神的にも自分自身を守らなきゃならないの。でもここではそんな心配はいらない。サンフランシスコにはクレイジーな人がいっぱいいるから・・・。
サシャ:攻撃的なものがいっぱいあるからね。札幌の人もクレイジーだと思うけど、全然別の意味でエキサイティングしているよ。
ウェディングパーティーについてもう少し詳しく教えて。
エイミー:基本的には、みんながいろいろ経験できるようなものを作りたいと思ってるの。パーティーに来る人も何らかの形で関わることができて、彼らがパーティーに参加できて、そこから何かを持って帰れるようなもの。
サシャと私は今CD-ROMを作っているんだけど、それがプレゼントの1つになる予定。透明なバッグに入れて、数は250個くらいになるんだけど、それをまとめてひとつの大きな作品になるような感じ。みんなが帰る時にそこから持っていけるようなものを考えてるの。
それともうひとつ、新婦になる人の子供の頃の思い出で印象に残っているのが、桜の木だったっていうこともあって、コンセプチュアルな桜の木も作る予定。木には見えないかもしれないけど、透明な布を使ってそれにアーチ型のチューブを縫いつけてサクランボをぶら下げるの。サクランボは、小さなプラスチックのボールで作って、その中には、魚の形のチョコレートを入れて、それを250個もぶら下げるんだけど、きっとものすごくキレイだと思う。
ビデオを上映するスクリーンも作って、会場の真ん中くらいに設置するの。ビデオの内容はまだ秘密だけど、自然の映像を3Dにレンダリングした美しいものになる予定。スクリーンは柱と柱の間に吊るして、その下には今作ってるカーペットを敷いてみんなが座って食べたり飲んだりくつろげる空間にしたいと考えてるの。バンドの生演奏なんかもあって、クニユキ・タカハシが中心となってやってくれるんだけど、AIRKINGがパーティーのために特別に作ってくれた2曲を演奏するの。パーティーに来た人が遊べるシーソーも今制作中。今のところはこんな感じかな。でもいろいろ作っていく過程で他にも新しいことを考えつくかも。
CD-ROMはどんな感じ?
エイミー:スモウゲーム!
サシャ:ゲームとインタラクティブな作品。
エイミー:楽しいサウンド作品になる予定。
なぜスモウなの?
エイミー:スモウが好きだから。
サシャ:スモウは日本的なものでしょ。
エイミー:多分、トラディショナルなスモウっていう感じにはならないと思う。きっと何か別の変な物になると思うわ。
一緒に仕事を始める時には、まず話し合いから始めるの?
エイミー:多分最初はちょっと欲求不満みたいな感じになってると思う。最初は方向性も決まってないし、ただ「何か作る」って感じだから。サシャが「何かある?」って私に聞いて、私が「まだ。何かアイデアは?」ってサシャに聞くと「まだ。」っていう感じ。今回のCD-ROMでは、私が「何か変なパチンコみたいなのにしたい」って思って、サシャにプログラミングをお願いして、ちょっとの間プログラミングに取りかかるの。マイケルとサシャが、このパチンコをいろいろ他のものと連動するための数学的な問題に3日間悩んで、それを解決して見せてくれた時に、「これが私のやりたかったことなの。このグラフィックでできる?」ってなるわけ。サシャのプログラミングから新しいアイデアが浮かぶこともあるし、その逆もある。お互いに刺激しあってるの。
サシャ:エイミーが作ったグラフィックを見れば、どうやってそのグラフィックを動かせばいいのかっていうのが分かるんだと思うよ。
エイミー:サシャが私のグラフィックを見て、「これできるよ」って、その逆で私がサシャのプログラミングを見て「これならできる」っていうこともあるしね。
最初は決まったコンセプトっていうのはないんだね。
エイミー:種があるだけ。
サシャ:2人共何がやりたいかっていうのは分かってるんだけど、まだクリアじゃない。最初はぼんやりした感じなんだ。
エイミー:最初にクリアなコンセプトがある時は、いつもたいてい同じようなものになっちゃうの。
サシャ:終わりまでいくのが辛くなっちゃうっていう。
エイミー:そのとおり。
サシャ:自分のしたいように自由に変えていくっていうようにすれば、もっと楽しくなると思うよ。
エイミー:例えばホールディングパターンズでは、ギャラリーに提出するのにどれくらいの大きさになるとか、ここはどんな感じになるとか最初に全部決めちゃわなきゃならなかった。それで、最初に3Dで作ってみて、いざ作ろうっていう段階で、すごく素敵なスタジオを見つけちゃったの。「こんな感じでやりたい」と思ったけど、できなかった。それを仕上げるために次のステップに進まなきゃならなかったからね。コンセプトを全部最初に決めちゃったから、最終的に出来上がった時は何も驚きはなかったわ。「気に入ってるけど、どんなのか分かってたし」って感じで、あんまりエキサイティングじゃなかった。私達が一緒に仕事をする時は、出来上がった時に想像もしてなかったものができて、すごくエキサイティングなの。
一緒に仕事をするのがすごく楽しいんだね。
サシャ:ものすごく!
エイミー:そのとおり。ケンカもするしね。ケンカっていっても、もちろ殴り合いのケンカじゃなくて話し合いだけど。それもプロジェクトに関してじゃなく、もっとスピリチュアルなことについて。
サシャ:僕が思うに、仕事っていうのは、僕達の関係の一番上にあるものだと思う。仕事は僕達が表現するものだけど、僕達は実際全く別のことやっている。それが、僕達がメディアだけでは何もやらない理由。ただのチャンネルでしかないからね。
2人にとってインターネットとは?
サシャ:僕にとってインターネットは、僕達の間に常に存在する画面のようなもの。インターネットを通して僕達みんなが繋がっているようにね。インターネットはそれを映し出すだけのものなんだ。
エイミー:私にとっては、意識の集合体のようなもの。ひとつだけ面白いのは、インターネット上にある情報量を目にした時、ポルノ関係のものってものすごく多いでしょ。それを目にした時、自分が考えてることと同じだって思う人が多いっていうこと。
サシャ:そう、僕達がいつも考えていることを写し出しているということだね。僕達の意識はインターネットの中にあるんだ。
エイミー:元の情報にアクセスするにもすごく便利。この前、ロボット工学について調べてたんだけど、何か疑問があったらインターネットが探してくれて、答えを見つけてくれるの。
サシャ:そして、誰もが自分の言いたいことを表現するチャンネルを持つことができるっていうこと。コントロールされたメディアじゃないけど、唯一のものだと思う。すごくいいことだと思うし、地球上で自分と同じことを考えている人コンタクトを取ることができて、繋がることができるんだ。
いろいろなことをやっている理由は?
エイミー:私は自分で自分のことをデザイナーだって思ったことは一度もなくて、ただ物を作るのが好きなだけなの。インターネットは、何かを作るには一番早い方法。でも物理的な面では、まだまだ足りない部分があると思う。カードを作りたかったら作ればいいし、家を建てたかったら建てればいい。例えば、マイケルなんかは、何でも自分で作っちゃう私のお父さんみたいに、ものすごくインスピレーションを与えてくれる人なんだけど、もしここにろうそくがあって、ろうそく立てがなかったとしたら、何か他のものを使って留めちゃうとか、彼の存在によって考えていることが実現できるようになるの。どんな素材を使ったらいいか迷っている時には、いろいろアドバイスもしてくれるし。
サシャ:どの素材を使って何をやるかのバランスなんだと思う。コンピューターの世界だけでは、道に迷ってしまうこともあるよね。
エイミー:今サシャがミシン使っていろいろ縫ってるみたいにね。
サシャ:ミシンは楽しいよ。実際に物を手に持つと心が休まって、何も考えずにいられるんだ。コンピューターを使ってると、無限にいろんなことを考えちゃって、何も考えないっていうのは無理だからね。
今月のSHIFTのカバーのコンセプトは?
サシャ:新しい環境に投げ出されること。自分の環境の外に出て、流れにまかせて、そこから何が起こるか。全ては自然に進化していくんだ。
エイミー:今マイケルとサシャと3人一緒に同じアトリエで生活してるんだけど、毎日のように人生についてとか話し合ってるの。いつもたいてい同じような考えで、3人とも繋がっているっていうのを実感するわ。人と人との繋がり、意識の繋がり。今回のカバーは、新しい場所に放り出されて何かに出くわすような感じ。何をしても他の人に影響を与えるように、このカバーに登場する女の子は、高く飛ぼうとしてその途中で何かにぶつかって、それが落ちてくる。ゴムを引っぱってパチンコで女の子を飛ばすことによっていろんなことが起きる。
2人にインスピレーションを与えるものは何?
エイミー:サシャ。
サシャ:エイミーと、まわりにあるもの全てかな。
エイミー:今は、日本の出店にものすごくインスパイアされてる。ゴールデンウィークに公園に行った時に見たんだけど、食べ物やゲームなんかのオレンジのテントみたいなのがずらっと並んでて、すごくかわいかったの。だから多分ウェディングパーティーもそんな感じになると思う。
サシャ:旅行が僕をオープンマインドにしてくれて、違った物の見方ができるようになるんだと思う。できるだけ何かに慣れてしまわないように心がけてるし、僕のまわりの環境に常に感謝しているんだ。なかなか簡単なことじゃないけどね。子供の心を持ち続けるのが難しいのと同じだよね。
今後の予定は?
サシャ:...。
エイミー:・・・。
サシャ:予定をたてるのは好きじゃないんだ。
それで、電話が来るのを待ってるんだ。
サシャ:ということでもないんだけど。
エイミー:私は来月には、FABRICAで教えるのにイタリアに行く予定。
サシャ:僕は夏に息子に会いに行く予定。将来的には、サンフランシスコとハンブルグに小さなエージェンシーが持てたらと思うけど。ちょっと実験的で面白いものになると思う。すごく楽しみだよ。
Future Farmers
住所:1201 B Howard Street, San Francisco, CA 94103
Translation: Mayumi Kaneko