NUMER.00

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

コンピュータを通じたコミュニケーションが日々の生活の中に入り込む中で、インタラクティビティーのあるデザインが欠かせなくなってきている。欠かせないものとして深く浸透する中で、インターフェイスとしての使いやすさと美術的な美しさが同居する新しいデザインの姿が生まれてゆくのかという疑問がそこはかとなく世界中で起こり始めている。それは、インタラクティブ・デザインがひとつのジャンルとして形成できるのかという危うさを現場にいる多くの人々が感じ始めているからかもしれない。美術そして文化に対して保守的な空気が流れるパリで、その疑問をクリエーター自身が解いて行こうとする国際カンファレンスが行われた。宮殿を改造したアートスクールの講堂で行われたびっちり2日間のプレゼンテーションと議論に300人以上の若きデザイナーたちが耳を傾け、議論の輪に加わった。

12月のはじめのパリはいつもとは違い、 コートを着ると汗ばむくらいの暖かさと時折降る雨で昼間でも薄暗さを感じさせていた。セーヌ川の南岸にあるパリ国立高等美術学校エコール・デ・ボザール。宮殿のような石造りの壮大な建物群によって形成されたこの場所の一角が今回のカンファレンス「NUMER.00」の舞台である。折しもパリでは電子工学技術と芸術との融合による可能性を深める地球規模の学会「ISEA」の2年に1度の大会が開催中、同じくこの「宮殿」の一角がISEAの舞台に寄せられた電子芸術の作品群による展覧会の場所にもなっていた。

NUMER.00が開催される前日、展覧会をのぞき見てみる。何気に学生たちがデッサンや談笑にいそしむ中庭の縁で巨大な爆発音がする。回廊に備え付けられた 10メートルは あろうかという巨大な対戦盤。これではチェスもできないだろうと思えば、両端にタッチパネルがついている。そのパネルに均等に配置された点を指差すとそれぞれ銃撃音やミサイル音が鳴り響く。これは、デンマークのオンコタイプによる「Rekyll」という作品。

作品そのもののコンセプトは爆撃・市街戦下で肉声が伝わることができるのかを仮想的に体験してもらうという極めて含蓄が深いものなのだが、ビジターにとってはパネルを触れて音そのものを鳴らすことに熱中してしまうという、覚めてみたらより一層自分自身に問い掛けてしまうものがまず御出迎えするのであった。轟音を背に講堂に入るとビデオものを中心とする数多くの作品が展示されている。講堂そのものは古の宮殿の華やかさを残す壁画や彫刻に囲まれた荘厳な空間で、その中で所々にモニタやコンピュータによって展示されるさまはなぜかうまく溶け込み、電子的なデバイスがもはや今の人間の意識の中では当たり前のものになってしまったのかもしれないと妙に感じ入ってしまった。

その展示手法の中で気になったのはCAVEの展示。 CAVEとは4面以上にシンクロしたCGを配した仮想現実感が強く感じられるシステムのこと。そのCAVE上で展開される現在までの秀作集(ボズニア戦争中の市街を観光客として探訪するというやすせなさが強く残る「WORLDSKIN」など)が公開されたのだが横の小講堂に配置されたCAVEとの仕切りが厚くて黒いカーテンになっており、CAVEそのものの見世物加減をより一層引き立てるものになっていた(ついでにいうなら長蛇の列だったので一層そう思ったのかもしれないが)のが強く印象に残ってしまったのだった。

あたかも昔からそこにあったかのような気分ということなら、別の講堂の奥の部屋を陣取ったヤコポ・バボーニ・スキリンジによる「Instrument a Gonds」という作品が際立っていた。シアター風の講堂の中心に銅による女性像が備え付けられているのだが、その像には超合金モデルのような溝がつくられており、それに沿って顔や背中、足などを折り曲げて行くとその隙間から声が漏れておしゃべりがかしましくなり、閉めると静かになってしまうというもの。それぞれの部分には見えないようにセンサーが込められているのだが銅像そのものの空間としてのはまり具合は秀逸ともいうべきものであった。

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