第11回 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭

HAPPENINGText: Shinichi Ishikawa

今年で第11回目を迎えたゆうばり国際ファンタスティック映画祭。毎年多くの映画ファンが集まるこの映画祭が、去る2月18日から22日の5日間にわたって北海道夕張市で開催された。海外からの招待作品の他、若手やアマチュアクリエイターの作品が有名無名を問わず集結し、見ごたえのある映画祭となった。そのなかで開催されたプログラム「デジタルシネマプレゼンテーション」を中心にレポートする。

と監督沖浦啓之、脚本押井守の最新注目アニメーション作品「人狼」

『私は映画祭とはキチンと映画の配給ルートを通る作品のみでをやるべきだ、という意見があるのも知っている。しかし、日本は映像に関して世界に誇れるレベルの技術を持っている。私は最新の技術とお客さんを結びつけるためにも「デジタルシネマ・プレゼンテーション」というイベントを映画祭のなかでやる意味はあると思う』という意味の挨拶が映画祭チーフ・プロデューサー小松沢陽一よりあった。

本イベントは、タイトルに「プレゼンテーション」と付く通り、完成した「作品」の上映ではない。ほとんど全て予告編やパイロット版である「未完成」のものだ。でも、そのなかに非常に近い映画の未来を「こっそり」観せてもらった充実感があった。これらは本来あまり一般的に公開されないものがほとんだと思う。もちろん、熱心なファンなら、都内のイベント等でチエック済かもしれない。しかし、「夕張映画祭」という、観光客など含む一般客も多数訪れるイベントのなかで行うことはより大きな意味を持つのではないだろうか。

今回の上映方式は、フィルムを一切使用せず作品はデータ化されハードディスクサーバーに収められ、映写はプロジェクターで行われている。僕自身はそれほどテクノロジーに精通している訳ではないが、開場の封切り映画館並みの大型スクリーンに投射された映像は、十分に一般的な鑑賞をクリアーできるものだと感じられた。全ての、プログラム上映後、デジタル機器の見学会が行われていて、一般客から、映画関係者、映画祭のゲストまで機材のまわりに大きな輪を作って、熱心に説明を聞いているのが印象的だった。

そのなかで特に興味を惹かれたものを個別に紹介していきたい。

「HEAVY ROTATION」(トリロジー)

もっとも気に入った作品「HEAVY ROTATION」。白黒のみで表現されたクマのキャラクターがひたすら子供達にシャレにならないイジワルをした後、誘拐して自分達の工場でクマに作りかえる、というエピソードが繰り返される。イジワルの内容は映画コードを無視したようなものなのに、クマ製造工場はベルトコンベアーのローラー部分がスマイマルマークだったり、スイッチのバーがアヒルとかになっていて、イジワルとのコントラストが素晴らしい。クマの製造過程の最後に仕上げが終わると昔のロボットアニメのように「ピキーン」と効果音つきで目が光るのもツボをおさえている。こう書くと、とてもハードなものと感じられるかもしれないが、それをあくまでシンプルに白と黒のみ(色なしのデイック・ブルーナのような潔さ)で表現しているのでドロドロ感のないスッキリとした後味のブラックユーモアの傑作。

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