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ナムジュン・パイク回顧展

HAPPENINGText: Rei Inamoto

ニューヨークのアッパーイーストサイドにあるグッゲンハイム美術館に足を踏み入れた時、「これこそが展覧会のあるべき形だ」というのが率直な感想だった。目も眩むばかりのまぶしいビデオインスタレーションがずらりと並んでいて、ナムジュン・パイクがフランク・ロイド・ライトの建造物を全くユニークでマルチメディアなものに変えてしまっていた。多くの人達、特に観光客がこの建物を見るために訪れていたが、パイクの圧倒的な作品郡が並外れたものを醸し出し、今回の展覧会を近年で最高にものにしていた。


Installation view: The Worlds of Nam June Paik, Solomon R. Guggenheim Museum, New York, 2000. Photo: David Heald

パイクはまず、1階の「同調の中の変調」と名付けられたインスタレーションで来場者を驚かせた。円形の建物の中央では、レーザービームが美術館の中心を撃ち抜き、フロアーから7階建ての高さの天井に至る全ての方向にダイナミックな幾何学模様が投影されていた。「ジェイコブの梯子」と名付けられた別のレーザーインスタレーションでは、緑色のレーザービームが天井から滝のように落ち、美術館を貫いていた。


Installation view: The Worlds of Nam June Paik, Solomon R. Guggenheim Museum, New York, 2000. Photo: David Heald

同じフロアーでは、海の映像を映し出すテレビモニターが観客の目に飛び込んでくる。次々に姿を変える魅惑的な映像が映し出され、円形広間のらせん形フロアーいっぱいに反響していた。この展覧会に足を踏み入れて数分のうちに観客は、ナムジュン・パイクの奇妙だが素晴らしいビデオ世界に夢中になってしまった。


TV Cello, Nam June Paik, 1971. video tubes, TV chassis, plexiglass boxes, electronics, wiring, wood base, fan, photograph. Dimensions variable © Estate of Nam June Paik, Formerly the collection of Otto Piene and Elizabeth Goldring, Massachusetts. Collection Walker Art Center, T. B. Walker Acquisition Fund, 1992

50年代後半から60年代前半にかけて常にビデオとパフォーマンスアートに第一線で活躍していたパイク。今回の回顧展では、パイクのコラボレーターであるクラシック出身のチェロ奏者、シャーロット・ムーアマンのために制作された 「TVチェロ」などの歴史的で有名な作品も展示されていた。らせん状のフロアーでは、20個以上のモニターで構成された「ビデオフィッシュ」という作品も展示されていて、モニターの前には生きた金魚(残念ながら死んでいたものもいた)が入った水槽が置かれていた。

パイクの最も驚くべき点は、彼の作品の時代超越性だ。30年前、 彼のアートは 過激でアバンギャルドだとされていたが、今もこれからも、彼は芸術表現における錬金術師であり続けるだろう。本当のパイオニアというものは、彼らが生きた時代に関係なく常に新しい分野を切り開くことができる人なのだ。ナムジュンパイクは、彼もその一人だということを証明している。

The World of Nam June Paik
会期:2000年2月11日(金)〜4月26日(水)
会場:Solomon R. Guggenheim Museum
住所:1071 Fifth Avenue, New York, NY 10128
TEL:+1 212 423 3500
https://www.guggenheim.org

Text: Rei Inamoto
Translation: Mayumi Kaneko
Photos: David Heald, Courtesy of Solomon R. Guggenheim Museum, New York

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