ジェレミー・ホリスター

PEOPLE

ミュージックビデオやテレビコマーシャルなどを中心に活動するニューヨーク在住のビジュアルエフェクツアーティスト、ジェレミー・ホリスター。その彼から1本のビデオテープが届けられた。
そのビデオは、コールドカットのリミックスによるスティーブ・ライヒの「Music for 18 Musicians」のプロモーションのために制作された映像で、美しいビジュアルサウンドスケープが印象的だ。
他にも様々なプロモーションビデオを手掛けている彼に、アメリカのブロードキャストデザイン事情などについて、いろいろとお話を伺いました。


まずはじめに、自己紹介をお願いします。

ジェレミー・ホリスター。ビジュアルエフェクツアーティストで、ニューヨークの MANHATTAN TRANSFER INC というプロダクションのデザイナー/ディレクターです。1997年にニューヨークに来ました。仕事のためにニューヨークに来る前は、シカゴの学校に通っていました。

そこでどんな仕事をしているのですか?

僕の仕事の大部分は、ブロードキャストとテレビコマーシャルで、フィルムやHI-DEFのプロジェクトもいくつか手掛けました。ブロードキャストでの最近のプロジェクトは、Sci Fiチャンネルのリデザイン、HBOのプロモーションビデオ、ESPNインターナショナルなどです。これらは、たいていデザイン志向で、実験的なことをすることが出来ます。
INFORMIXのエンドタグや新しいメルセデスのキャンペーンのためのシンプルで古典的なタイポグラフィック・アニメーションも手掛けました。そのプロジェクトで、サイモン・テイラーやジョアン・ラスポ、ボブ・イングリッシュ、トッド・ミュエラーなどのディレクターと一緒に仕事をするチャンスを得ることが出来ました。

モーショングラフィックスは、どのように学んだのですか?

大学では、政治学を勉強していたのですが、論文を書くのに飽きてしまって、アニメーションのクラスを選択しました。スケートボードやサーフィン、スキーなどのスポーツや音楽といったような、時間をベースとしたアートにずっと興味がありました。
アニメーションは、あまり自発的なものではないですが、原理上は似ています。トラディショナルな方法を使ってプロジェクトをいくつか完成させた後、編集のミキシングを開始し、フィート数を発見しました。EMERGENCY BROADCAST NETWORK(EBM)に最も影響を受けました。また、グラフィックを合成するためのPREMIEREや3Dソフトウエアなどのソフトウエアベースの編集プログラムの探求を開始したのもこの頃です。
実用的に適応するものの大部分は、一緒に仕事をしてきた素晴らしいデザイナー達の経験や、僕自身の可能性を広げてくれるようなデザインプロジェクトなどから得ることが出来ました。

モーショングラフィックスを制作するときのポリシーを教えてください。

出来るだけ広い視野でデザインに取り組むことが必要です。そうすれば、その結果つくり出すものに対して、ベストな解決法を考え出すことが出来るのです。また、デザイナーは商品サービスの中にいるということを認めることも重要です。一種の取り引きです。デザイナーは、楽しい仕事をすることが出来ますが、結局はクライアントのために適切なものにする必要があるのです。
メディアの可能性を広げる努力をすることも同じように重要です。アメリカのテレビは、「最小な共通分母」にアピールすることを最大の目的にしている傾向がありますが、それは侮辱的なことだと思います。テレビを見る人達は、ステレオタイプではなく、賢く、洗練されています。デザイナーとして僕は、多様な視野に恥ずかしくないような、巧妙なレイヤーを作って行きたいと思っています。
実際の作業過程に関しては、なりゆきまかせのことが多いのですが、作業の段階で起こる間違いが結果として良いものになることもあります。自分自身や一緒に仕事をしている他のデザイナーとアイデアを出し合い、フォトグラフィーのディレクターと共にフィート数を計り、その後、実際のデザイン過程に入って行きます。

ライヒリミックスのビデオについて教えてください。どのようないきさつで制作し、何を表現したのですか?

ライヒビデオを制作するきっかけは、ちょっと変わっていました。レーベルのコミッショナーに、ライヒリミックスアルバムの中のコールドカット・リミックスのために、面白いものを制作するように依頼されたのですが、スタイルや方向性についてとても大ざっぱな人で、基本的には、白紙委任という形でした。他のコマーシャルワークの制約からのいい気分転換になりました。
僕が好きなコールドカットと、20世紀のアメリカの作曲家の中でもメジャーな人物でループ音楽の革新者でもあるライヒが合体した曲にアプローチした時に、ミニマルでエレガントであると同時に、コールドカットのリミックスのエレクトロニックな90年代のバイブを反映しようと考えました。作品にあまり手をかけすぎないようにしようとも思いました。

建築にずっと興味があって、サーリネンやニーマイヤーなどによる現代建築物が、空間のフォルムとコントラストの美しい手本になると考えました。また、これらのフォルムと空間に対するアイデアを高めるために、異なった建築上のアイコンや広大な空間、モデルと女優の最小限の動きを使ったライブアクションを通して探求すれば、面白いことになるだろうと考えました。ビジュアルテーマを確実にするために背景に白を使い、色を白と青に限定しました。
目的は、ライヒの作曲法にある音色のバリエーションを反映しつつ、鍵を握るテーマがほんの少しの変化で繰り返される、漠然としたビジュアル・サウンドスケープを作り出すことでした。

このビデオで、3Dアニメーターでありディレクターである、パトリック・オブライエンや、デザイナー、エディー・パク(SUCTION)ら素晴らしいクリエイターと共に仕事が出来たことは、とてもラッキーでした。
全てがコラボレーション次第であるメディアにおいて、このビデオのような大きなプロジェクトに取り組む時には、いいチームがいるということは、とても重要です。
プロデューサーのアダム・シュロスバーグ、撮影監督のジョン・ソーヤーやカラーリストのクリス・ジェナレリ、エディターのジェームス・マツロ、モデルのH.D.、メイクアップアーティストのキム・ベイマンも、このプロジェクトに参加しました。

制作には35ミリで撮影し、AVIDで編集しました。3DにはSGIのソフトイメージとNT。グラフィックと合成には、MAC G3のアフターエフェクツを使い、ディスクリート・ロジック・インフェルノをSGIオニックスで使っています。

アメリカのブロードキャストデザインシーンについてお聞きしたいのですが、面白い動きや、代表的なプロダクションを教えてください。

ブロードキャストデザインがブームになっています。この分野に対するテレビジョンネットワークの意識が高まり、プロモーションビデオを制作するデザイナーがたくさんいます。全体的にここ4年間のアメリカでは、テレビジョンのためのデザインが確立し始めていると思います。
大企業の中でも「3 RING CIRCUS」や「FURL」、「IMAGINARY FORCES」は、いい仕事をしています。カイル・クーパーと「IMAGINARY FORCES」は、自分自身の考えを表現していて、いつでも面白いことをやっていると思います。DOOMの「LEGION」や「V12」などの小規模なカンパニーも台頭してきています。SHOWTIMEやMTVも同様に、組織内にいいデザイナーを多く抱えています。
ブロードキャストデザインは、今ちょうど面白い時期にあります。エキサイティングで異なった発展を見せる間際にあると思います。

今興味のあることは何ですか?

ファッションにとても興味があります。その全体的なアイデアは、とても曖昧で柔軟性があり、ファッションのムードがシンプルさとミニマリズムの必要性に反映するものだと思います。でも同時に、イッセイ・ミヤケや、FINAL HOME LABELなどのデザイナーのやり過ぎなジッパーや触感はクレイジーですが、彼がLIQUID SKYの音楽レーベルと共にニューヨークにショップをオープンしたのは、面白いです。音楽とファッションをミックスするという独自の道を行っているという点で、意味があると思います。

音楽は僕の存在の主成分で、いろいろな種類の音楽を聞きます。特にブラジリアンやアフロビート、アシッドジャズ、エレクトロニカなどのグルーブ感のあるものが好きです。好きなアーティストは、UNITED FUTURE ORGANISATION、JAZZNOVA、フレデリック・ガリアーノなどです。
リミックスカルチャーの洗練には、驚くべきものがあります。曲に対するバリエーションと解釈をたくさん与えてくれます。自分自身でDJもやっていますが、他のクリエイティブなアウトレットを探求するいい方法になります。

フィルムにも興味があります。反語的かもしれませんが、エフェクトが多すぎる映画は、あまり好きではありません。いいストーリーにひねりが加えられていて、心理的な緊張感があるものの方が好きです。ドイツ映画、「ランローララン」は、エンターテイメント性がある一方で、現実性における一時的でポストモダンな理論があって、面白かったです。初期の「アキラ」も素晴らしいです。
他に好きな監督は、タルコフスキー、バーグマン、キューブリック、ジャームッシュ、ジャネット&カロ、フェリーニ、ウオン・カーウァイなどです。

もし、他の土地で活動するとしたらどこに行きたいですか?

日本には何度か行ったことがありますが、日本の映画関係やアーティストと一緒に仕事をするために行ったわけではありません。実際、ミュージックビデオを作ってみたい日本のミュージシャンも何人かいます。
ヨーロッパは、かなりエキサイティングですね。特にイギリスには、美しいデザインとものすごく賢い広告を展開している人達がいます。オーストラリアも音楽とデザインでいい物を作っています。

最後に今後の予定、やりたいことなどを教えてください。

来週、ストックホルムにバケーションに行く予定です。何をするかは、全く決めていませんが、いいデザインとファンキーな家具、強いウォッカに期待しています。
ミュージックビデオをもっとたくさん制作して、ナレーティブのアイデアを、それがデザインコンセプトとどう結びつくかを観察しながら、もっと深く掘り下げて行くつもりです。
リミックスという点で言えば、音楽を作ったり、リミックスをしたりして遊びたいです。

Text: Mayumi Kaneko

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