アルス・エレクトロニカ 1999

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

昼間はなごんでいるのに、夜になると一転、激しいイベントが毎晩繰り広げられる。

「今年もこれに行かなければ」と多くの人をやみつきにさせているのが「列車に乗れ」。リンツを支えてきた製鉄所の中を深夜、列車に乗って徘徊するという「良い子の社会科見学」みたいにも聞こえるアトラクションなのだが、体験するとたまらない。このアトラクションだけのためにあるのではというガラス張りの特別車両に搭乗、車両の両端にある巨大スピーカーがいやが上にでも目に入る。動き出すと、このスピーカーから製鉄所で集められた騒音たちがミックスされたノイズミュージックをこれでもかというほど、耳に皮膚に浴びせ掛けられ、そして列車は煮え滾る溶鉱炉のギリギリを走り続ける。

そう、この線路は、いつもは煮え滾る鉄を入れた釜が走るコースを行くのである。そんな地獄の思いを1時間に渡って「もういや」と思うほど体験させられて開放されるのだが、降りてみると「好い刺激だなあ」と思わせる魔力があるのだから怖い。確かに、溶鉱炉を抜け、リンツ港(河なのに大きな港がある)にさしかかった時、ガラス窓が自動的に開いてその上をカモメの群れが飛び交う姿はえもいわれぬ開放感を与え、これに著者はぐっときた。このように、人それぞれ違うのだろうが、20世紀という産業化の時代の想い出ともいうべき感性に直接訴え掛けられて、つい、やみつきになってしまうのだろう。

そのやみつき故に「列車に乗れ」のチケットは、1ヶ月以上前に予約をしないと手に入らない。しかし、なぜか不思議なもので、人づての噂をキャッチするとチケットの束を持っているスタッフに出会えてもらえたり、送迎バスに乗り込んでしまったら列車に乗れたりとアバウトなものである。何とかがんばれば結局は楽しめるというのがアルス・エレクトロニカのいいところ。

これでもかがより一層炸裂したのは「99.9.9」レイヴ。最終日のクロージングイベントとして、99年9月9日でかつ夜9時9分のごろあわせで始ったこのレイヴ。火炎放射器を仕込んだパーカッションによるライブが屋外でお出迎えの中、会場に入るとタイプライターと電話の轟音、コンピュータ化されていないオールドスタイルのオフィスが奏でるアンサンブルが第一曲。知らない間に机が取り払われ、“OLたち” が “オフィス” を離れると2階のベランダに照明、そこには沢山のミキサーを並べた机があっていろいろなものを搾って音にするなど、その後はインパクトドットプリンターのオーケストラと、次から次へと様々な音たちの演奏が続く。

それが終わったとなるや次は隣の部屋の大ホールへと移動。フェスティバルと同時に開催されるコンテスト「Prix Ars Electronica」のデジタルミュージック部門の入賞者たちを中心にしたノンストップセッションに突入する。とはいえ、「パワーブック・オーケストラ」による「耳には悪いが体には良さげな」(杉山知之デジタルハリウッド校長談)超重低音大音響ノイズや巨大ドライアイスをパーカッションに擦りつけて「ジュー」音を奏でるものなど、一体いつもはどの様な活動をしているのだろうというミュージシャンが、大友良英によるエッジの効いたターンテーブル・プレイといった通好みのゲストたちによるプレイと混ざりあいながら朝方まで途切れも無く続いたのであった。

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