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アルス・エレクトロニカ 1999

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

アートフェスティバルといえば、お行儀よく作品を観賞し、レクチャーやシンポジウムでひたすらお勉強と感じる方も多いことだろう。しかし、中には刺激満点の仕込みをお腹一杯に充填して、眠らせないと手ぐすねひいて待っているアートフェスティバルというのが実は存在したりする。

少し遅いバカンスに毎年日本からやって来る人がなぜが続出してそれも増え続けているという、まるで1週間限りのテーマパークとでも言っていいこのフェスティバル、それがアルス・エレクトロニカ。実は今回で20周年を迎える、オーストリアのドナウ河畔の中都市・リンツを舞台に毎年開催される、世界最長かつ最大級のメディアアートのフェスティバルだ。

科学技術の発展と社会や個々の生活を結びつける存在としてエレクトロニックアート、そして、メディアアートを取り上げることを基本理念とするこのフェスティバルは、メディアやテクノロジーによる新しい変化で特に注目深い事柄を毎年テーマに設定して、テーマに対応した、もしくは今が旬と決め撃ちしたアートイベントを1週間にわたり、これでもかと朝から晩まで街中で繰り広げるというものである。

昨年は「インフォウォー」(情報戦争)をテーマとして、河原に世界からハッカーが集結した「ハッカーテント」を建てたり、街の中心の広場に地雷原を仮設したりと派手であったが、今年は「ライフサイエンス」をテーマとして生体に関わるテクノロジーに対してどうアートが対峙できるのかを考えるという知的好奇心に訴え掛けるものであったが、相変わらずこの場でしか味わうことのできないイベントが街中に仕込まれていた。

さあ見るぞと気合を入れなくても、何気なく楽しませてくれるのがアルス・エレクトロニカの特徴。朝から晩まで幾つものイベントが重なるリストの中から、これはと思ったものをつまみ食いするような感覚がちょうどいい。全部見るということは到底不可能で、これだけはおさえないとと考えて行動すると食事も睡眠もできなくなってしまう感じになってしまう。

広々としたドナウ河の河原を歩く。河原といっても芝生を敷き詰めた公園でそれだけで気持ちいいのだが、なぜか巨大なスピーカーがクレーンに吊るされている。その方向に向かうとピアノの調べが流れている。見渡すと土手の上でマイケル・ナイマンがピアノを演奏していたりする。

そこは、5日間の会期中にわたって、ナイマンは昼下がりの間、河原でピアノを弾き続け、その演奏をリアルタイムで若手の音楽家がリミックスするというイベントが行われている最中の光景。悠然とした河の流れに向かって奏でるナイマンと芝生。その環境はなごむのに十分なもの。聴衆は芝生にしゃがんだり、寝そべったり、本を読んだりしてナイマンを囲む。そして、ナイマン自身も『自分自身もああいうのんびりとしたところで演奏できて楽しめたよ』と語る程になごむのであった。

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