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服部全宏

PEOPLEText: Akira Natsume

『ペンと紙。それは、個人の表現衝動をアウトプットするための最も身近な存在です。そして、どこにでも、携帯できる紙がノートです。「NOTE」は、有名無名を問わず作品の発表と、新しい才能のショウケースであり、そして手に取った人がペンをとって描きこんだり、いろいろな角度から使うことができる「実験ノート」です。』という服部全宏編集長の手書きの言葉から始まる読者参加型メディア、それが「NOTE」。

メモ帳サイズの作りになっている洒落たビジュアルフリーペーパーの中には、東京を面白くしている沢山のクリエイティブな人達が作品を発表したり、気になる事を寄せている。丁寧に作り手側の息吹きをノートに封じ込めたこのメディアは、右から左へ流れてしまう事が多いメディアの中で、個別な情報だけでなく、本自体を身に付ける楽しみ、持つ事の楽しみを教えてくれる事に成功している。

もうすぐ3号目が配付されるこの「NOTE」を編集している服部全宏編集長に、インタビューを行った。

「NOTE」に至るまでのお話を聞かせてください。

クラブキングにいる頃に「ディクショナリー」を編集させてもらっていて、その時に、いろんな人の生原稿を見る機会があったり、グラフィックとかの現場も見るチャンスがあったりしたんです。もともと、音楽好きってことで、クラブキングに入って、日本音楽選曲家協会という音楽をセレクトしたり、どういった音楽をセレクトすればどういったムードになるのかという、一種の音の編集的行為に興味がありました。でもディクショナリーの編集を通してグラフィックというものに、面白みとか、可能性とか、そのフィールドに集まっている人達に、興味を持つようになって、ディクショナリーにもそういったグラフィックを多くのせるようなっていったんです。

それが一つの形になって「ビジュアルディクショナリー」というタブロイドサイズの、ビジュアルだけの新聞を作る事になりました。その時には編集長という形で作らせてもらっていて、その「ビジュアルディクショナリー」も終わったときに、「ビジュアルディクショナリー」をやったことで回りの反応も良くて自分でも自信が付いたので、自分でも挑戦してみたいなという気持ちが起こってきて 会社をやめまして「GO PUBLIC」という事務所を作ったんです。

それも、幸運な事だったんですけど、いろいろな人に退社の報告をしてた頃、レコードのプロモーションの仕事をしたり、小冊子を編集していたんですけど、その時に高城剛さんから「フリーペーパーを作りたいという人がいるんだけどやってみないか?」って話が来たんです。最初、学校のプロモーションのような要素もあったんだけど、メディアを作って、それをサポートをしているのが学校なんだよ、って形でやりたかったんです。けっこう沢山作りたいって事だったんですけど、その部数が最初14万部。

14万部ってすごい数でしょ。ディクショナリーは5万部だし、ビジュアルディクショナリーだって1万部だったんです。これまで経験した事がなかったし、14万部も刷るフリーペーパーを街に配るって事を想像した時に、ファーストフードにおいてあるチラシだったりとか、旅行の案内みたいにゴミみたいになってしまう物しか想像できなくて、ゴミになってしまう事に責任を感じてしまったんですよ。14万部という数に。

本当に14万部も作ったんですか?

作った! 作りました。 その時にたまたまTVで、森林伐採でオラウータンが住む場所がなくなってしまうニュースを子供と一緒に見てしまったんですね。俺、そういう原因を作っている一人でもあるのかなと考えてしまったときに、 なんかこう 14万部というとある程度、パブリックなもので、多くの読者に向けて作る物になるんですけど、読者はこう思っているんだろうとか、読者はこういう物を欲しがっているんだろうという自分の決めたターゲット、価値観で物を作ってしまうのは、リアリティーがないですし、結局編集している人間が、自分に向かって、自分がターゲットにならない物は作ってもゴミになるし、やる意味もないし、もし作ったとしても、作っている人間が楽しくない物というのは、見ている人にとってもつまらないものになるだろうなというのを実感としてずっと感じていて、 だから14万人の人を楽しませなくちゃいけないんだろうけども、自分自信も楽しんでしまえるような内容にしたかったんです。

でも、ある人にはどうでもいい情報だったり、情報の押し付になったりする可能性もあるわけじゃないですか。そういう物って欲しくないわけだから、その人にとってはゴミになってしまって、結局ゴミを満たす原因になってしまう。そういう人にとっても何か使えるものだったり便利なものだったら、まぁ取って置くかなって思ったわけなんです。(笑)

そうしたら、僕が考えた中身に対して反応する人は1万人だったりとか、 5万人だったり、もしかしたら3000人なのかもしれないのだけれども、 それ以外の人にとっても、あっなんだか分からないけど、書けるし、使えるからってことで、便利じゃんって取って置いてもらえたらゴミにはならないでしょ。(笑)

なんか矛盾している所からスタートしているんですね。(笑)「NOTE」で伝えたい事はありますか?

伝えたい事って、 「NOTE」で手書きで書いているマニフェストみたいな文章だったりするんですけどね、ここに書いてあるペンとか紙ってすごく原点みたいな物でしょ。何かをやりたいとか表現したりとかの、そういう原点を忘れてしまった人は気付いてもらったりとか。そうだよね。って共感する人にはここを通じて、何か実験をしてもらったりとか、そうやって、実験をくり返していかないと…、なんて言えばいいのかな。

前に進んでいかない?

うん! やっぱり閉塞感みたいなのってあるじゃないですか、いろんな新しいものが生まれないとかさ、そういう言い方をしてしまうじゃないですか。でも、まだまだあるような気もしたりとかして、そう言うのって、実験していかないと、「そんなのあったじゃん」って言ってやらないよりかは、「でもやってみたいんだ!」ってやって、失敗したりとか、やっていく内に変なノイズみたいな物が生まれて、「何それって面白いじゃん」って、ハプニングが起きていく事が、イノベートしていくって事だったりするよなって事なんですよね。それを言葉として伝えたいわけじゃなくて、手にとったり、その人自身が動いた所から、イノベートが始まるってことを一番伝えたいですね。

それがこのイギリスで見つかったという「NOTES」に繋がるんですね。
(イギリスで、見た目がまったく同じで、しかもタイトルまで同じ「NOTES」という小冊子が見つかった。内容、中身共にレベルが高く、服部編集長、デザイナー共にその発見を喜んだという話し。)

そう そう!! これのようにイノベートしてくれたらこれはまたこれで、面白いじゃないですか? ほんとは、「NOTE」をコピーレフトにしたいくらいですもん。

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