服部全宏

PEOPLEText: Akira Natsume

正に実験の場なわけですね。服部さん自身は、参加される作家さんとコラボレーションするスタイルをとっているのか、それとも、作家さんにあくまでも自由に作品を作るスタイルを取るのかどちらですか?

それは、ケースバイケースです。やりたい事がある人には、「あぁーじゃそれやって」という感じですし、この人にこういう風なのをやってもらったら、面白いかなって時には話しを持っていって「一緒にやらない?」って時もあるし。この雑誌がどんな風にやりたいのかが、筋が通っていれば、そこからはいろんな小枝が伸びていてもいいのかなって感じています。

90年代は、D.I.Y 精神に貫かれたインディーズ活動が、メディア、音楽共に花開いた時代だと思います。服部さんが、今インディーズという言葉から感じている事を教えてください。

みんなインディーズでいいんじゃないかな。極端な例だけど、スターウォーズというのは、いろんな雑誌にも書いてありましたけど、すごく大きなインディーズだったりするわけじゃないですか。ジョージルーカスがそこまでコントロールしたいわけだから。作品の内容もそうだし、どういう風に作品をお客さんに届けたいかとか、作品と出会う直前まで、あの人は考えてコントロールして環境設定をしたいから、自分で全部お金を出したインディペンデント映画でしょ、あれは。どっかの映画会社がお金を出したわけじゃないから。そういうことなんじゃないですかね。インディーズって。

僕も同意見です。インディーズってただのジャンルではないですよね。ジョージルーカスの活動にはインディーズと言う言葉がすごくストレートに感じる時代の幕開けを感じます。

テクノロジーの進化によって、 個人という事が、 「GO PUBLIC」という名前もそういった意味合いがあって付けた事務所なんですけど、インターネットの時代になって、始めて国境とかのカテゴリーがなくなって、個人というものが、「ここにいます!」って時代になって、そこに本当にアクセスできるような時代になったわけじゃないですか。

その「GO PUBLIC」という言葉の意味をもっとくわしく教えてください。

株式とかの業界用語で、店頭公開って意味だそうです。例えば、服部商店って名前のお店が店頭公開する前は、周りにいる人達と商売していたんだけど、店頭公開することでいろんな所から服部って名前のやつがいるんだということが知れわたって、アクセスが起きたり、投資する人が現れたりする事なんですけど、それぐらいインターネットの事が僕の中で大きかったんです。

でもそれが直接インターネット上でやるということには繋がらなくて、そこに入って、気付いた事をもう少し現実の世界に返して上げたいということはあるんですけど。いろんなショウケースじゃないですか。だから、いろんな知られていない人とか面白い事をパブリックにしていきたい、という。自分達もそこに載っていきたいんだけど、そうゆうことだけでなくて、そういった人達をパブリックに伝えていきたい。という意味合いがあって付けた名前です。

「NOTE」以外の活動もそこを目指しているんですか?

そうですね。やっぱり編集をやっていると、自分達でお金を稼ぐという問題もあって、編集とプロモーション。両方とも何か近い物があって、編集とプロモーションの中間みたいな形を目指していて、それの近未来系みたいな形を作りたいんだということを初めから言っているんですよ。

その具体的なプランはあるのですか?

まだ、実験をしている最中で、これだっていうものは、まだ見つかっていないですけど企業がカタログを作るというときにでも、それがどこまで企業の押し付けじゃなくて、みんなが共有できるところまで持っていけるのかというお手伝いはしてますね。
プロモーションという領域をもっと面白くしていきたいと思ってます。で、一方で、ちゃんとそういった人達を紹介してアウトプットして、その人達が仕事になるように持っていければいいかなって思っています。よく分からない会社ですね。

今の東京に感じている事を教えてください。音楽や、メディアなどが、低迷しているという話しを僕は聞くのですが。

勇気を持つ事かな。なんか、自分自身が、何に感動しているのかとか、自分自身が何が好きかという事を実感できるようにならないと、ダメなんじゃないかな。そこをとっぱらっておいて、本当に自分にとってリアリティーのないことをやってしまうと、そんなの誰にも楽しくないし、誰にも響かない。さっきと同じ話なんですけど。自分自身の感覚をもう一回見つめ直すという事を、あえてしようとしないと、その人にとって、周りにあるものはどんどんつまらないものになっちゃうのかなと思います。そこをはっきりさせとかないとその人自身がつまらない人になってしまうから、全部つまらない物になって「今、面白くないんだよね〜」って話しになってしまうような気がするんだよね。

実際、面白い物は街に溢れているのでしょうか?それとも面白くないものが今は多いのでしょうか。

面白い物は出ています。繊研新聞という所で面白い物を紹介させてもらっているんですけど、紹介する物の価値基準というのは一緒で、何が面白いかというと、作っている人達自身が、自分の価値観で面白いと思った事を信じている。そんな物が面白い。そんな事があるから東京は変わってきていると思いますよ。

時代が変わってきている…?

いきなり、マスに話しを持って来て、ドカンと打ち上げ花火のような発想をしないで…なんか、その物自体が金額的なものだけでなくて、マネーじゃない何かが自分に返ってきたりする事って大きかったりするじゃないですか。そういう物を自分の中に価値基準として持っている人が増えてきているし、そういうのを持っていれば、おのずと、音楽とか、物とか良質な物は、僕は楽観主義者だし、理想主義者なんで、人に伝わっていって、残っていくと思います。だから、実際にそういう物は出ていて、言葉を超えて伝わっている実感があります。

だから、服部さんはそんな作品を集めて、「NOTE」という結晶を作っているんですね。面白くないって言っている人は、その人自身が見えてないからなんですかね。

面白くないって言った時は、その人自身が面白くなくなっているんじゃないかな。面白い物を見つけるアンテナが動かなくなっているんじゃないかな。

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