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シュー・リー・チェン

PEOPLEText: Mariko Takei

昨年11月26日、オランダからメディア・アクティビストのヘアート・ロフィンクが来日し、渋谷XPでトーク・サロン「アムステルダム・インパクト」が開かれた。そこでゲスト・トークをしたのがシュー・リー・チェンである。自ら「デジタル・ドリフター」と名乗るシュー・リーは、その名が語るように、ニューヨーク、アムステルダム、東京と活動の拠点を移動しながら、様々なメディアを通して作品を展開しているアーティストである。

現在東京に拠点を置き、新作フィルム制作をおこなっているシュー・リー・チェンに、フィルム、インターネット・インスタレーション、アムステルダムなど、彼女のワークスタイルを形成する様々な環境や事柄などを語って頂きました。

東京でフィルム制作をしていると聞いたのですが、どんなフィルムなんですか?

アップリンクの浅井さんからポルノ映画をやらないかってところからスタートしました。私たちの間で、常にサイエンス・フィクション・ポルノを作りたいというアイディアがあったんです。最初はただポルノ映画を作ろうとも考えてました。ひと月くらい東京に滞在して、ささっと撮影して終わらせようかなぁって。けど今では、もっと時間をかけていて、すごく楽しくなってきました。ストーリーもいいものができたし、沢山のアーティストが参加しています。

フィルムはサイエンス・フィクションで、ポスト・ブレードランナーといった感じです。ブレイド・ランナーっていうと、ネオンとか未来のオリエンタリズムなどがアイディアとなってて、ちょうど今の東京と似たところがあるでしょ。SFフィルムを作るにあたって、ポスト・ブレードランナーについて考えなくてはと思ったんです。ブレード・ランナーの多くのイメージには、私たちにはすでに受け入れなれないものがあったり。今は未来のことを想像しながら、東京でロケをやってます。

東京に来る前にSFをやろうという構想はあったのですか?

去年(1997年)の12月にこの映画の大筋は書いてました。去年NTT ICCのプロジェクトの活動をしていたときに、浅井さんから映画を作ろうって話があって、提案書を作ったり。その後、忙しくなってしまって話が延びてしまったのですが、今回やろうってことになって、今はこの映画の制作をしています。

フレッシュ・キル」 などいくつかのフィルム制作を行っていて、人種や性、ミクスト・カルチャーなど題材も様々ですが、例えばテクノロジーということでも、インターネット・インスタレーションなど様々なメディアを通して作品をつくってますよね。

現在はアートとコマーシャルな世界の中で、フィルムとインスタレーションを手がけるアーティストとして活動しているんだと思います。沢山のメディアを併合してね。35ミリフィルムかデジタルかのトランスレーションということでもあるんです。

テクノロジーを使うということに関しては、テクノロジーってどこにでもあることだと思うんです。テクノロジーという言葉を使うと、みんなナーバスになったりするけど、テクノロジーって本当にどこにでも存在するものだと思う。私のテクノロジーを使った作品はだれもがアクセスできるように、ありふれた方法でなされてると思ってます。そういうことで、私は見る人に近づきたいって望みがあって、そういう理由で私の作品の多くが異なるメディアや方法によるものが多いのです。

アップリンクのサイトで今回の映画「I.K.U.」のストーリーを読んだのですが、コンピューターを使用することで、人がエクスタシーを感じることができるという話がありましたね。

今の人々が多くのセクシュアル・システムを必要としているのではないかと思うのです。例えば薬屋で「精力をつけるために」みたいなもの見ますよね。あとセックス・トイ・ショップとか。日本の何かの雑誌で多くの女性がバイブレイターを使うようになってるって読んだこともあります。セックス関連店って日本ですごくポピュラーだったりしますよね。だから、未来に向けてセクシュアルに関連したファンタジー・ランドみたいなものを創りだすことも必要なんじゃないかなって。

性に関して変な映画を作ろうっていうのではまったくなくて、実際に普通に見えるカップルでさえ、今までと違った方法でオーガズムを感じるようなファンタジーをエンジョイすると思うんです。

では「ブランドン」プロジェクトについてですが、そこでも性にまつわるようなイメージが沢山みられますよね。

「ブランドン」はグッゲンンハイム美術館に依頼されたウエブサイトなんです。特にこのインターネット・プロジェクトは期間を設けたウエブサイトなんですが、「One year narrative project」と呼んでます。1年の間にストーリーが変化し、沢山の人が関わることになるんです。多くのアーティストも参加することになっていて、全てのイメージがそのアーティスト等によって変わっていきます。ですから沢山の人がアクセスするストラクチャーとしての数多くのインターフェイスという風にみています。

ストーリーですが、ブランドン・ティーナという実在した人物の話からなってます。ブランドン・ティーナはネブラスカ州の田舎町に住む男装していた女性です(本名はTeena Brandon)。彼は最終的にはレイプされ殺されてしまうのですが、その後に彼が本当は「彼女」だったということが知れ渡るのです。

1994年にすごく大きく取り上げられた話なんですが、このことから様々なことを考えるようになりました。1994年から95年にかけて、ウエブをやるようになって、当時からインターネットで外的人格とか人格の切り替えという様なことがあったし、すごく気になってたんです。プロジェクトとして好奇心があったわけではなくて、ただ現実とサイバースペースってことがね。現実とサイバースペースで人格を切り替えることはどう違うのか、何が違いをつくっているのかってことです。

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