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イアラ・リー

PEOPLEText: Satoru Tanno

イアラ・リー監督によるドキュメンタリーフィルム「シンセティック・プレジャーズ(人工的快楽)」。ヴァーチャル・リアリティーをテーマに宮崎シーガイアや人工スキー場、ゲームセンターなどの仮想空間、ボディピアッシング、整形手術や冷凍保存、性転換など変化しつづけるアイデンティティをスピード感溢れる映像とCG、故ティモシー・リアリー、R.U.シリウスなどのコメントと共にフィーチャー。

テクノロジーは私たちに何をもたらすのか?この映画の中では、肯定も否定もせずに淡々と映像化されているのだが、この映画がつくられた後のテクノロジーの発達はすさまじく、現実のバーチャルさは日々深まって、日常化され、3年という月日をかけて撮られた映像は若干の古さを感じ得ないが、次なる映画「モジュレーションズ」を撮り始める彼女にいろいろとお話しを伺った。

いつからアメリカに住んでいるのですか?

もともとはブラジル出身だけど、1989年にアメリカに来ました。ブラジルで、映画祭を運営していたので、1日に10本ぐらい映画を観たりして、カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアとか映画祭なら全部行ってましたね。自分のブラジルの映画祭のために面白そうな映画を調査したりね。その後、カメラの前じゃなくて、後ろに行きたくてアメリカに来て映画学校に通って、3本ほど、短編映画を撮ったんですよ。シンセティック・プレジャーズは本当は、4本目の短編になるはずだったんだけど、面白いテーマだったので、そのまま自分としては初めての長編映画になったわけです。

この映画をリリースするのに、3年かかったそうですね。

そうなんです。大きな作業行程があったもので手間取りました。次々に大きくなっていって脚本やストーリーボードで始めたのとは、違うものになっていったんです。だから、時間と共に進行していったという感じです。それからやっと、映画ができあがって、映画祭をまわったんです。ベルリン、サンダンスとかトロントなどといった主な映画祭に行って配給元と話をしたりしたんだけど、最終的に自分で配給することになって、うまくアメリカの主要都市で上映することができたわけです。

ティモシー・リアリーや、R.U.シリウスといったサブカルチャー・ヒーローも出演してましたが、シンセティック・プレジャーズを撮った動機は何だったんでしょう?

彼らは基本的に、我々の現代社会のテクノロジカル・アイコンなわけで、いつも彼らの哲学には心酔していたんですよ。この映画にピッタリだったんです。ティモシー・リアリーは、常に自分を刷新する人でドラッグを人間の意識を解放するものとして使ったり、コンピューターに対しても同様に考えていたんです。コンピューターというのも、意識の解放を促すんです。彼は、物理的な世界を超越しているんです。R.U.シリウスもまた、空想という領域でリアィティーを超越するためにテクノロジーは使われるべきだと思っていて、非常に革新的な人物です。事前にリサーチを沢山して、この映画の内容に合う人物を、選んだというわけです。最初に彼らに話を持ちかけたとき、彼らは、私が何をするのかさっぱりわからなかったみたいでしたけどね。でも、映画の準備が整った頃は、みんなビックリしてましたね。とにかくみんな楽しんでくれて、サポートしてくれて良い感じでした。そして、これがティモシー・リアリーの最後の映画出演になったわけです。彼が、亡くなりかけてた頃、ヴィデオをまわしてた人は沢山いましたけど、この映画がまさに最後の映画だったんです。

R.U.シリウスは映画の中で、バスタブにはいってましたね。

R.U.シリウスはあまりシリアスな人じゃないですね(笑)。頼めば、なんでもしてくれるんですよ。私が、バスタブなんてどうって聞いたらすぐに、いいよって言って、1秒後にはそこにいたってかんじかな。

それでバスタブに入ってたんですか(笑)

彼はとても自然で、心が開かれているんですよ。どんな実験的なことも受け入れるんです。

この映画であなたは、単にテクノロジーの未来を描写しようと試みたと思うのですが…

えぇ、ちょっとした警告もありますけど。一つの答えを定義付けるなんてできないわけだし…。良いか悪いか、良くも悪くもあるのか、邪悪でもあり素晴らしくもあるのかとかなんてねぇ、どう観るか次第なんですよ。
大抵みんなは単純な答えを求めるようですけどね。時々、「あぁ、この映画は強い意見がでてるな」というような言われ方されるけど、そういうことじゃないんですよ。ただ、物事はそう単純ではないということですよね。それで、映画にはその主題の複雑さを込めたんです。
シーガイアの屋内ビーチを見て、「うぁ、凄い」と言うだけの人もいれば、この屋内ビーチの完全に保証された悦楽に疑問を持つ思考を持つ人もいるわけです。この映画への反応を見れば、その人がどんな人か分かるんですよね。みんな違うレベルで知覚してるんです。上っ面しか見ない人はただ、カッコいい!ぐらいでおしまいですが、理解できる人には、この映画の提起しているものが分かるんです。

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