杉本博司 絶滅写真
HAPPENINGText: Alma Reyes
また、このセクションには、〈Opticks〉シリーズの大判で鮮やかな色彩のパネルも展示されている。これらのクロモジェニックプリントにおいて、杉本はポラロイドカメラを用いて、ガラスプリズムを通過する光線を記録した。ニュートンが1704年に実施した分光実験に着想を得て、杉本は標準的な色帯の間に閉じ込められた無数の配色を発見することに成功した。この見事な成果は《Opticks 087》(2018年)に具現化されており、光を通して浮かび上がる青色の色面が、抽象画のような世界を創り出している。

杉本博司《Opticks 087》2025年 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
杉本は、静電気発生装置であるヴァンデグラフ式40万ボルト起電機を用いて、放電の効果を写真の乾板に直接焼き付ける手法を採用した。この試みは、ベンジャミン・フランクリンやマイケル・ファラデーの革新的な電気研究、そしてタルボットによるカロタイプ写真(ネガ・ポジ一体型プロセス)の発見に端を発している。《放電場 163》(2009年)をはじめとする各作品は、流星のような光のシャワーや稲妻の枝分かれを映し出している。杉本にとって、この技法は暗室における科学の先駆者たちへの認識をさらに深めるものとなった。それは、実験的な写真と錬金術が見事に融合した世界である。

杉本博司《放電場 163》2009年 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
少し間をおいて、昭和天皇、カストロ、ナポレオン、ダイアナ妃などを捉えた、大判の〈ポートレート〉作品群をじっくりと鑑賞してみてほしい。杉本は、王室の肖像画をモノクロ写真へと再解釈し、蝋人形を思わせる驚くほどリアルな質感を生み出している。
最後に、同館3階ではサテライト展として、制作の秘密を明かす未公開資料「スギモトノート」が初公開され、その写真制作プロセスの秘密を垣間見ることができる。1970年代半ばから、杉本はこれらのノートにスケッチ、図解、数学的な計算をまとめ続けてきまた。あるプリント記録には、理想的な印画紙を選定するために行ったテストが記されており、階調のバランスを調整し、暗室技術を駆使する手順が詳細に記述されている。さらに、同館が所蔵する〈海景〉や〈劇場〉シリーズの作品アーカイブが、展覧会全体にさらなる深みを与えている。
杉本博司 絶滅写真
会期:2026年6月16日(火)~9月13日(日)
開館時間:10:00~17:00(金・土曜は20:00まで)
休館日:月曜日(ただし7月20日は開館)、7月21日(火)
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル 9:00~20:00)
https://art.nikkei.com/sugimoto/
Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado




