「杉本博司 瑠璃の浄土」
HAPPENINGText: Amelia Ijiri
日本で二番目の公立美術館として1933年に開館した京都市美術館は、帝冠様式の外観を保存しつつ大規模な改修を行い、京都市京セラ美術館の通称で、2020年春、リニューアルオープンした。
現存する日本の公立美術館の中で最も古い建築で、神宮道から繋がる本館に、ガラスのファサード「ガラス・リボン」が加えられ、カフェやミュージアム・ショップに光が差し込むように改修された。
Photo: Takeru Koroda 提供:京都市京セラ美術館
『京都という街は、素晴らしい生活文化を持っているところ。古くはお茶であったり、現代ではアニメーションであったり、いろんな生きてるものがある。そういうものを分け隔てなく扱っていくという意味で、美術館を「開かれた美術館」としてとらえ直したほうがいいだろうと思ったんです。美術館の展示室だけが重要というのではなく、美術館という与えられた空間全体にうまく「気」が回ること。そしてそれが外とつながることがすごく重要』建築家として改修工事の責任者でもあり、館長にも就任した青木淳はデザインのコンセプトを美術手帖のインタビューでこう述べている。
展示風景より、杉本博司《アイザック・ニュートン式スペクトル観測装置》(2020年) Photo:Sugimoto Studio
新たにオープンした新館「東山キューブ」では、開館記念展として、国際的に活躍する現代美術作家で京都とも縁の深い杉本博司の個展「杉本博司 瑠璃の浄土」が現在開催中だ。杉本は、ガラスや色彩、工芸品、科学を使って、神聖、意識、精神性、死のテーマを探求し、世界的に高い評価を受けている。
「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 © Hiroshi Sugimoto Photo: Yuji Ono
杉本の京都での美術館における初の本格的な企画となる本展では、新たに制作された京都蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)中尊の大判写真を含む「仏の海」や、世界初公開となる大判カラー作品「OPTICKS」シリーズといった写真作品の大規模な展示を行っている。
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