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ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着

HAPPENINGText: Alma Reyes

志賀理江子による巨大な作品《なぬもかぬも》(2025年)は、東北各地でのフィールドワークに基づき、複数の次元が重なり合った作品である。会場全体が、壁面に沿って200メートル以上も続く、青みがかった一続きの写真の絵巻物で構成されている。入口では、1969年に青森で進水した原子力船「むつ」をモデルにした、巨大なターポリン製の船が、瞬時に鑑賞者を圧倒する。これは、科学技術による改革を追い求め、夢と不安に憑りつかれた国家を象徴している。そこには、悲しみと運命のメタファーとしてへその緒が絡まった新生児であり、現実と幻想、過去と現在を越境する架空の存在「褜男(エナオ)」、色彩豊かな星座、そして不気味な血の道など、胸を突くようなイメージが描かれている。


志賀理江子《褜がらみで生まれた》2025年 © Lieko Shiga. Courtesy of the artist

会場に響く蛙の鳴き声は、人間と自然、知と身体のつながりを想起させる。ビジュアルと呼応するように記されたテキストは、父との釣り、1945年の牡鹿半島での戦闘、原子力船「むつ」の実験航海の影響、マーシャル諸島での米国の水爆実験など、東北・三陸地方の社会的・環境的なトポグラフィー(地形図)を形作るエピソードを、「褜男(エナオ)」の浮遊する思考として書き留めている。これらは、高度な発展を遂げながらも不安定な方向に進む社会の危うさを描き出している。


志賀理江子《なぬもかぬも》2025年、山城知佳子×志賀理江子「漂着」展示風景 © Lieko Shiga. Courtesy of the artist. Photo: kugeyasuhide

作品タイトルの「なぬもかぬも」は、東北方言で「何もかも」を意味し、志賀のインスタレーションでは、苦悶、混乱、絶望から逃れたいという願望、しかし解決には至らない状態へと解釈されている。志賀は2008年に宮城県に移住し、コミュニティと自然を巡るテーマに焦点を当てて作品を制作してきた。特に2011年の東日本大震災以降、彼女は人間の精神における「回復(recuperation)」の経路を探求している。

彼女はニューヨーク近代美術館(2010年)、アムステルダム写真美術館(2013年)、ボストン美術館(2015年)などで作品を展示している。その功績により、2007年には木村伊兵衛写真賞など、数多くの賞を受賞している。

石橋財団コレクションからは、ジンジャー・ライリィ・マンドゥワラワラ《四人の射手》(1994年)、ヘンリー・ムーア《プロメテウスの頭部》(1949年)、瀧口修造《無題》(1972年)、アルベルト・ジャコメッティ《歩く人》などの作品も展示されている。これらの作品は、希望、危険、神話、精神性、意識、記憶といった共通する響きを呼び起こす。

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着
会期:2025年10月11日(土)〜2026年1月12日(月・祝)
開館時間:10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)
休館日:月曜日(1月12日は開館)、12月28日–1月3日
会場:アーティゾン美術館
住所:東京都中央区京橋1-7-2
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.artizon.museum

Text: Alma Reyes
Translation: Hoshino Yoshihara

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