テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする
HAPPENINGText: Alma Reyes
ザ・ビートルズ、ツイッギー、マリー・クワントといったアイコンが登場した “スウィンギング・シックスティーズ” は、音楽、アート、ファッションを活気づかせた英国の活気に満ちた時代だった。コンランは実業家として、1964年に最初の小売店「ハビタ」を開店し、カラフルな家具やインテリア雑貨のラインナップを揃え、英国の戦後不況の憂鬱を吹き飛ばし、生活文化に革命をもたらした。
そして、1970年代から展開した「ザ・コンランショップ」におけるセレクトショップの概念は、日本を含む世界のデザイン市場を激変させた。現在、ロンドン、ソウル、クウェート、そして日本全国に店舗を構えるこのショップは、合理的なデザインで知られ、照明、家具、キッチンやベッドルームの小物からインテリア全般に至るまで、スタイリッシュな現代的ライフスタイルの社会的トレンドを後押ししてきた。コンランのデザインは、彼のトレードマークであるシンプルさ、美しさ、機能性、そして驚きに満ちている。

コンランが手がけたレストラン「ブルーバード」(1997年開店) Photo: Alex Pareas, Courtesy of Conran and Partners
コンランが “人生の謳歌” に開眼したのは、1953年に初めてフランスを訪れたときのことだった。おいしい料理とワイン、オープンテラスのレストラン、市場の露店や歩道の商店に並ぶ豊富な品々など、天国のような体験が気軽にできる。このインスピレーションが彼をレストラン・ビジネスへと駆り立て、大陸の料理への情熱をイギリスへと運ぶことになったのだ。本展では、白と黒の床とタイル張りのテーブルが印象的な「スープ・キッチン」(1953年)、モダン・フレンチの「オレリー」(1954年)、「ニール・ストリート・レストラン」(1970年)、「ブルーバード」(1997年)など、コンランが設立したレストランのいくつかを取り上げ、各レストランのエレガントな灰皿、花瓶、コースター、カトラリーなどの食器類が展示されている。

バートン・コート自邸内の仕事部屋、2004年撮影 Photo: David Garcia
栄華を極めたコンランは、ロンドン西部のバークシャー州キントベリーに広大な別荘を構え、1970年代からそこで暮らしながら仕事をした。58万平方メートルの広さを誇る18世紀末の赤レンガ造りの邸宅バートン・コートは、デザイナーの個人的な美術館のような役割を果たし、モダン、素朴、大胆、洗練、自然、人工が融合した彼のシグネチャー・アイテムで埋め尽くされている。キッチンや広大な庭にも、手の込んだディテールが施されている。1984年に設立されたベンチマーク家具会社のデザインは、このオフィス・レジデンスで開発された。

改修されたミシュランビル(レストラン「ビバンダム」とザ・コンランショップ、1987年改修)
レストラン事業にとどまらず、コンランは、都市計画、建築、歴史的建造物の買収にも乗り出した。1980年、建築家フレッド・ローチとともに建築設計事務所を設立。彼が手がけた最も重要な再開発のひとつが、1911年に建てられたチェルシーの「ミシュラン・ハウス」(1987年)である。改築された鉄骨とガラス張りの建物は、オフィススペース、小売店、レストランが一体となった施設に生まれ変わった。コンランは、ステンドグラスの窓、陶器、鉄細工を中心にアール・デコ調のテイストを残した。1890年代に遡る「ビブ」または「ミシュランマン」としても知られる象徴的なビバンダムは、ファサードの表舞台に立っている。その他にも、1873年に建てられた「バトラー・ワーフ」(ビクトリア朝時代の古い倉庫街)は、再生材や既存の資材を利用し、レストラン、バー、ショップ、ギャラリー、アパート、オフィスなどに改装されている。
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