ソール・ライターの原点 ニューヨークの色

HAPPENINGText: Alma Reyes

ライターの作品に目をつけていたエスクァイア誌のアート・ディレクター、ヘンリー・ウルフは、1958年にハーパーズ バザーの編集長に就任するとすぐにライターを同誌のカメラマンとして起用した。ファッション写真は、ライターが商業的に認知される第一歩だった。その後、80年代にかけて多くの雑誌でファッション写真を撮影した。本展では、1958年から1960年代のハーパーズ・バザー誌におけるソール・ライターのファッション写真を一堂に公開。商業性の求められるジャンルにおいても自らの美意識を存分に発揮したライターの写真からは、世界の中心地として黄金期を迎えた豊穣なアメリカ文化の芳香を感じることができる。


ソール・ライター『ハーパーズ・バザー』1963年2月号のための撮影カット © Saul Leiter Foundation

これまでのBunkamura ザ・ミュージアムでのライターの展覧会とは対照的に、今回は色彩豊かなガッシュや水彩画の数々が紹介されている。ソール・ライターは「画家の眼を持つ写真家」であった。明るいパレットと暗い陰影が幾重にも重なったそれらの作品からは、写真と同じような印象を受ける。ライターは、『写真の道に進まなければ画家であり続けただろう』『絵画は創造であり、写真は発見だ』と語っている。


ソール・ライター《無題》1960年頃 © Saul Leiter Foundation

ライターはピエール・ボナール、エドゥアール・ヴュイヤールといったナビ派や、印象派、書道、浮世絵から多大な影響を受けていた。1960年頃の無題の作品には、モデルのようにポーズをとる女性が描かれ、緑、バラ、黄色の色彩が調和している。また、風景や海の景色を描いた作品も多い。彼は日々、抽象的な表現を描いていた。特筆すべきはその色彩感覚で、縦横無尽に色と一体化し、遊ぶように描かれた絵画作品は、彼が唯一無二のカラー写真の世界を創り上げることができた秘密を解き明かす鍵となる。


ソール・ライター《無題》撮影年不詳 © Saul Leiter Foundation

最後のセクションでは、ライターの豊かな色彩感覚にさらに近づくことができる。生前のライターがプリントの状態で確認したカラー作品はわずか200点余りであり、彼にとってカラー写真はアトリエ壁面に投影するなど、光を通した状態で見るカラースライドであった。会場では、彼の最初の写真集「Early Color」(2006年)と、「Unseen Saul Leiter」(2022年)に収録されている作品などから厳選したカラースライドの複製を多数展示。また本展の目玉として10面の大型スクリーンに初めて公開される作品を含む最新の作品群約250点をスライドショーで投影し、「カラー写真のパイオニア」と称され世界中を驚かせ続けるライターの色彩の世界を大規模プロジェクションで体感できる。

ソール・ライターの原点 ニューヨークの色
会期:2023年7月8日(土)〜8月23日(水)
開場時間:11:00〜20:00(最終入場は19:30まで)
会場:ヒカリエホール ホールA
住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ9F
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.bunkamura.co.jp

Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE