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アンノウン・アジア 2021

HAPPENINGText: Taketo Oguchi

今年も本誌編集長の筆者が審査委員の一人として参加したので、ここからSHIFT賞を授与した作家と、注目した作家達を紹介したいと思う。


ボール・ピヤラック

今回、SHIFT賞として選出したのは、タイのアーティスト、ボール・ピヤラック。2021年、癌のためこの世を去った彼女の哀悼の意を表して出品された「Loved and Gone」シリーズのコレクションは、癌との闘病中、彼女自身の心と身体と向き合いながら制作されたもの。彼女は2年もの間、病気と一緒に暮らしながら、心身の癒しとしてアートを創り続けた。本作品は、どんなに苦しい時でも、世の中や人々との繋がり、アートを生み出すことを強く望む一人の人間の生命力に溢れている。


新工芸舎

身の回りにあるアイテム(この場合は石)とテクノロジー(3Dプリンター)の掛け合わせによって、新たな価値を生み出す好例。日本の伝統工芸の流れの中で、コンピューターやテクノロジーを活用した新しい手仕事を「新工芸」と呼ぶ、新工芸舎によって今回出品された作品は、石を3Dスキャニングし、それにぴったりと合う形で加工されたパーツを組み合わせ、日常に溶け込む、実用的なオブジェ。ファブカルチャー(デジタルファブリケーション)を通して工芸的な態度を復活させる新しい動きは今後さらに注目されるのではないだろうか。


せのー

一見、筆で引いたような線は、身の回りのものを撮影した写真をデジタルスキャニングした素材の組み合わせで出来ており、それらを再構築することで、新たな命を吹き込まれ、アート作品が生み出される。作者のせのーは、この再構築の過程で、日常を取り巻くノイズから、自身にとって重要なものを見つけ、修復作業を行うことで、新しい価値観を提案している。今回発表した作品群はどれも色使い、構図にもセンスが感じられるが、特にシンプルな一輪挿しの花の作品が印象に残った。

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