アウトサイダー・アートフェア 2017
HAPPENINGText: Isabella Howard
カール・ハマー・ギャラリーからは、シカゴでその生涯を過ごした謎多き孤高の芸術家・ヘンリー・ダーガーの作品が展示された。今回は彼が約10年にわたって制作した、15,145ページに及ぶ物語と、数百に渡る水彩画からなる傑作「非現実の王国で」から4作品が展示された。
Henry Darger at Carl Hammer Gallery. Photo: Courtesy of the Gallery
「ヴィヴィアン・ガールズの物語」は、七人の少女騎士たちが自分たちの国を守るため、邪悪な勢力と熾烈な戦いを繰り広げるおとぎ話だ。ダーガーの作品では、花が咲き乱れたカラフルな風景と、純真な少女たちが凄惨な危険や暴力にさらされる姿がしばしば描かれている。
Judy Chartrand at Macaulay & Co. Fine Art. Photo: Barb Choit
マコーレー&Co.は、クリー族の工芸家であるジュディ・シャルトランの作品を展示した。彼女は自身の作品の中で、アンディー・ウォーホルのスープ缶といったこれまでの美術史的要素を取り扱う。そしてそれと同時に、アメリカの文化から消え去ってしまったメティス/クリー族の遺産にも触れ、それらを表舞台に再提示するのだ。
Danielle Jacqui at Galerie Polysémie. Photo: Pagan Carruthers
ギャルリー・ポリセミのブースでは、フランスのマルチメディア・アーティストであるダニエル・ジャッキーのコートを観ることができた。その刺繍を施されたコートは、彼女がフランス・ロックヴェールの住居で制作した作品を彷彿とさせた。外装や内装を装飾した色とりどりの陶磁器やペイント、ハンドクラフトといった素材で描かれた開放的で活気にあふれる鮮やかな柄や模様に良く似たパターンを、彼女のコートの中にも見ることができたからだ。
今回アートフェアの来場者が、昨年に比べて20%増加したというレポートが発表された。この観客の増加は、アウトサイダーアートに対する興味が一般大衆だけでなく、伝統的なアート産業に関わる人々にとっても広がり、増え続けていることを物語っているだろう。
ブルーチップ・ギャラリーのマリアン・ボースキーは次のように述べている。『アウトサイダーとインサイダーの境界線が入れ替わってきているように感じる。美術学校に通い、学問的に訓練を受けたアーティストたちは、奨学金や技術から抜け出し、自分にとって正しい方法と相応しい素材を使って、自分自身を表現しようとしている』と。この考え方が、アウトサイダーアートフェアのアイデンティティの中に流れ続けている。興奮や驚きを常に生み出し、観客がそれを体験できる、ユニークなアートフェアとして。
Outsider Art Fair 2017
会期:2017年1月19日(木)〜22日(日)
会場:Metropolitan Pavilion
住所:125 West 18th Street, New York, NY 10011
TEL:+1 212 337 3338
info@outsiderartfair.com
https://outsiderartfair.com
Text: Isabella Howard
Translation: Haru Murayama
Photos: Pagan Carruthers, Courtesy of the artist, © 2017 Wide Open Arts