米澤卓也
PEOPLEText: Aya Shomura
「日々の生活の中で感じる楽しいこと、面白いことを伝えることに興味がある。また自らの作品で鑑賞者に非日常的体験を共有できる空間づくりを目指している」と作家ステートメントにありますが、具体的にどのようにアイディアを形にしているのですか?
「Day Tripper」Takuya Yonezawa 2012年、600 x 600 mm、Oil and Acrylic on Panel
日常のふとした時に感じた非日常感を切り取って作品にすることが多いです。例えば、赤い車にアブが止まっていて、それを見たときに「デイ・トリッパー」を思いついたり、食事中のチキチキボーンが高橋由一の「鮭」とリンクしたり。ただ、その感覚を作品にする時に「非日常だぞ!」と鑑賞者に押し付けることが無いように気をつけています。入り口は常に軽い必要があると感じます。
静物画の「スティル・ライフ」シリーズについて教えて下さい。
今回ホテルで展示している「スティル・ライフ」に描かれている果物は全て偽物です。この作品シリーズは美術準備室にあった、長年使われていないプラスチック製の洋梨のモチーフを発見した時に思いつきました。視線を向けられることのないモノの「訴え」のようなものを感じてそれを可視化するためにどのような手法が適しているかを考えたところ、集中線を入れるという発想に至りました。
「Still Life」Takuya Yonezawa 2014年 個展「PRISM」クロスホテル札幌 2015年、1,300 x 1,600 mm、Oil on Canvas Photo: 小牧寿里
静物画のモチーフでありながら、スティル・ライフ(=生と死)ということにフォーカスしているようにも感じます。
生と死というテーマに関しては特に意識していません。僕にとって大切なのは、自分の作品によってどう楽しんでもらうか、自分の感覚を追体験してもらえるかで、作品はそのための装置だと思っています。作品が鑑賞者の記憶とリンクして様々なイメージを呼び起こすことができればと思います。
「appeals」Takuya Yonezawa 個展「PRISM」クロスホテル札幌 2015年、1,200 x 2,000 mm、Acrylic on Panel Photo: 小牧寿里
今回の個展タイトルでもある「プリズム」シリーズは昨年から制作しているそうですね。インパクトのある集中線効果もあって、これまでの作風とはガラリと変わった印象を受けます。具体的にはどのような想いが込められたシリーズなのでしょうか?
「プリズム」シリーズは一枚一枚の絵に特別な設定はなく、鑑賞する方々の想像の余白が広い作品です。「スティル・ライフ」シリーズの延長線上に位置する作品で、何かを見た時に(別に大したものではないけれど)個人的に異様な輝きを放つ瞬間というのがあって、それを目に見える形にしたいと思って始めました。なんとか具現化ができないかなと思っていた時にRSRのライブドローイングがあって。マスキングテープを使用した制作を行ったのですが、絵の具のマチエールの面白さに惹かれたのもあって制作に至りました。
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