アート・アップ!2014
7度目の開催となる今年、フランス・リールのコンテンポラリー・アートフェアは「リール・アートフェア」という名称から「アート・アップ!」へと変貌を遂げた。イベントに変化と活力を与えようというオーガナイザーの意向が明確に示されたかたちである。以前と同じ運営陣が続投するも、今回、セレクションの質の高さを担保すべくコレクター1名と専門家数名により構成される委員会が補助に加わることとなった。
Art Fair View © Maxime Dufour
こうした努力にもかかわらず、アート・アップ!の全体の印象としては、大量に装飾的な絵画や彫刻を売りさばく純商業画廊と才能あるクリエイティブなアーティストをプロモートする芸術本位なギャラリーの間のある種のアンバランスさがある。出展ギャラリーの多くは、リスクの大きい現代美術を避け、近代美術を紹介している。他方で現代美術分野では、カラフルでわかりやすいストリートアート、ポップアートの高い比率が目立った。あるいは、例えばリールのギャラリー・バックヴィルのように、著名な作家(荒木経惟)と若い世代(ブース壁面に生じたびっくりする程の亀裂はオレリアン・メヤールの作品)の両方を広くセレクトしているギャラリーもいくつか見受けられた。
Aurélien Maillard, Galerie Bacqueville
幾何学的抽象は再び流行しているようで、フランス北部出身の作家ジュヌヴィエーヴ・クレスをとりあげたブース(ヴァグネルギャルリー、ル・テュケ)や、フランソワ・モルレ、オレリー・ヌムール、ヴェラ・モルナーらの美しい小品(ジャン・グレゼ、ブザンソン)が見られた。アーノルフ・ライナーやハンス・アルトゥング(ボカーズ・現代アート、ロッカンジェ)といった、ヨーロッパのアートフェアではお決まりのアンフォルメルと表現主義の大家たちも健在だ。
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