柿﨑均展「光のかたち」

HAPPENINGText: Eri Yamauchi

「ガラスのインスタレーション」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。美術展におけるインスタレーション作品は数多くあれども、ガラスのみで構成されたインスタレーション作品はなかなか目にする機会がない。本郷新記念札幌彫刻美術館にて開催されていた「柿﨑均展-光のかたち-」では、美術館の展示室が全てガラスの作品で飾られた意欲的な展覧会だ。様々な表現の試みがあり、ガラスという素材の持つ表現の幅広さや可能性を感じさせるものだった。

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最初に目に入るのは、展示室へ上る階段の途中にある、ガラスでできた椅子だ。「わきあがる椅子」というタイトル通り、ガラスの筒の重なりが光とともに噴水のように湧きあがる。訪れる人を歓迎しているような、晴れやかな作品だ。

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暗闇の中、蛍のような緑色の光を放ち、何輪もの花が宙に浮かんでいる。暗室での展示作「シリーズ琳-花(スイレン)」である。幻想的な光と微かなゆらめきが静寂な空間を作り出し、時の経過を忘れてしまうようだ。一つ一つの花に注目してみると、花弁の一枚一枚は割れたガラスの破片のように切り口が荒く、形は不揃いだ。そのため睡蓮の一輪一輪も微妙に形が異なっている。

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次の部屋の作品は、ガラスの透明な影を利用したユニークな作品だ。タイトルは「DOGGIE」と「BIRDIE」。小さなガラスの板をつなぎ合わせて面を作り、犬と鳥の形を模したところに三点から光を当て、影を作り出している。柿﨑の過去の作品に、「JIBWA」という作品がある。

ガラス板をつなぎ合わせて形を作るという手法は同じだが、今回は「影」を映し出した点が過去作と異なる。この作品が生まれたきっかけは、夜間作業中の柿﨑が、ガラスに光が当たり、影を作り出しているのを目にしたことだという。透明な影という新たな表現を楽しもうとする、柿﨑の純粋な表現意欲を感じさせる作品たちだ。

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