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チームラボ「超未来芸術」展

HAPPENINGText: Kurando Furuya

今回の作品の登場人物たちは鑑賞者に反応したり、お互いのアクションに呼応して楽器を演奏したりと思い思いの動きをしていますね。

今回の作品で伝えたかったことはいくつかあるのですが、まず「抑制されていない、アンバランスなものの美しさ」というテーマがひとつです。昔の日本人は不完全なものの美を知っていました。例えば竜安寺の石庭、禅寺の石のカタチ。大自然の中で “いびつ” な、エネルギーの塊をピックアップしています。盆栽も同様、小さな器の上に、めいっぱいの生命が溢れ出た小宇宙になっていますよね。アジアのデザインはエネルギーを解放するようなもので、逆にヨーロッパのデザインは抑制によって成り立っていると思います。

それは具体的にどういうデザインのことでしょうか?

例えば西洋の庭であれば左右対称のデザインをしたり、木も刈り込んで抑制を加えることでデザインする。日本の庭は自然の中で、人がエネルギーの塊って感じるものをピックアップして、それをありのまま配置しています。

もちろん現代でもそれは続いていて、西洋のファッション誌はレイアウトもシンプルで、セーブすることでデザインされていますが、日本のファッション誌では本質的には逆で、特に「小悪魔AGEHA」などでは混沌としたレイアウトで、アジア的なエネルギーで満ち溢れています。欧米では「バランスが取れていることが気持ち良い」という文化が発展して、日本は「アンバランスなものの中の美」が気持ち良いっていう部分が発展したのだと思います。

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「花と屍 アニメーションのジオラマ」チームラボ, 2008, アニメーション

そういう個々のエネルギーを暗闇の中に配置したという状態ということでしょうか?

各々エネルギー溢れる “個” がそれぞれ解放された状態で並んでいて、ひとつの世界観を紡ぐことができるのではないかと思ったのです。今回のスマートフォンの小人たちも生命をつくって、自由に解放されている状態。まさにお祭りの時の解放された人々が、無数のスマートフォンの中に存在している。その小人たちがお互いにコミュニケーションして、上手く行けばお祭りの状態になります。

具体的にこの作品を作り上げたプロセスを教えてください。

今回の展示は回顧展ですが、どうしても新作を入れたかったのです。それで台湾の携帯メーカーのHTCお願いしました。展示始まる4週間くらい前にコンタクトして、2日後には必要な台数を確保したと連絡がきました。開発も大急ぎだったので、先方のエンジニアが端末6台をもって台北から羽田に持ってきてくれて。チームラボのエンジニアも羽田に出向いて、すぐ仕様のディスカッションをその場でしました。

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「秩序がなくともピースは成り立つ」チームラボ, 2012, インタラクティブ・アニメーション

ずいぶん、ダイナミックな制作プロセスですね。

彼らもテクノロジーもアートも大好きなので、すぐに協力してくれました。音楽はチームラボと沢山お仕事をご一緒させてもらってる高橋英明さん。今回はスマートフォン1台1台から音楽を奏でて、それがハーモニーになるので、ベースになっているのは小人たちの足音。近くにある携帯が発している足音に足並みを揃えて、それがベースになっています。

近くのものに同期して広がっていくというコミュニケーションです。小人たちが持っているのは、笛、小太鼓、大太鼓、鐘、琵琶、横笛、あとは唄を歌うんですが、ボーカルは昔のニュースステーションのオープニングテーマも手がけている福岡ユタカさん。高橋さんが僕らのコンセプトを完璧に理解してくれて、最初にあがってきた音を聴いた時にはあまりに本格的すぎて思わず笑ってしまって。

あとアニメーションはチームラボのビジュアルディレクターの寺尾(実)がディレクション、伊藤(篤史)をはじめアニメーションチームがCGに動きをつけたのですが、阿波踊りをベースにした踊りの動きをつけて、チームラボのコンピュータービジョンチームの加藤(哲郎)が実際の人の動きなど外界を認識して、いろんな情報をもとにチームラボのエンジニアの坂下が小人たちをインタラクティブに動かしています。

スマートフォンが置かれている場所の温度が上がりすぎるとか、長時間連続稼働の問題だとか、電気供給の問題だとか、現地で大量のスマートフォンを設置してはじめて分かる問題が多すぎて、オープン時は全く完璧な状態にできなくて、そのまま坂下は現地に残って、(7月3日現在も)台湾で、色々な問題を解決させています。7月に入ってようやく良い状態になっています。

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