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西尾美也

PEOPLEText: Yuko Miyakoshi

「セルフ・セレクト」は2007年にフランスでも行われていましたが、フランスとの違いはいかがでしたか?

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「セルフ・セレクト・イン・パリ」 パリの町を歩く見ず知らずの他人と衣服を交換したプロジェクト(2007)

一番明らかなのは、立ち止まって話を聞いてくれるということですね。日本もフランスも一緒だと思うのですが、話しかけられるだけで断る人がほとんどだと思うのです。それに対してケニアでは「何なに?」という感じで聞いてくれる。時間のゆとりと好奇心がある、というのは感じました。日本の児童館で服作りワークショップの活動をしていたのですが、そこに来ている子供たちとナイロビの人たちはリンクする部分がある。時間を気にしてないっていうのと、何かやってると気になって突っ込みたくなる、関わりたくなる、そのエネルギーには似たものを感じます。

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「オーバーオール:蒸気機関車」公開制作で町行く人に布を縫ってもらうところから参加してもらい、でき上がったパッチワークを電車に見立て、線路の上を歩いた(ナイロビ 2010) Photo: Yasuyoshi Chiba

パッチワークシリーズの蒸気機関車のプロジェクトも、事前に告知とかしてないのです。告知する方法もないですし。それなのに、やっているうちに口伝えで伝わって、徐々に参加する人が増えていったのです。それで僕自身もすぐ終わるかと思っていたのですが、1時間ぐらいずっと線路の上を歩いたのですよ。自ら楽しみを見出すというか、能動的に楽しむというか。なかなか日本ではないことかもしれないですね。パッチワークを作る時には、現場にあるもので作るというルールがあります。新しいものを持ち込むとコミュニケーションが変質してしまうので、そうじゃなくて今まで現場にあったものを、使い方を変えていったりすることでコミュニケーションを変えていきます。それから、どこの国でもデザインしないと決めています。

生地にこだわるとか、デザインをするとかいうことではないのですね?

まず、そこは無視するという感じです。そこにこだわってしまう人だったら、多分ああいうことはできないと思うのです。僕はそういったこだわりは、ある意味どうでもいいと思っているところがあって、僕が模索しているのは、そうじゃないファッションの価値なのです。パッチワークは、アートやファッションはこうだ、っていうある種の固定概念みたいのを崩す方法でもあります。布を切り刻むということがその象徴でもありますし。

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「Position」2人の半分ずつを引っ付けて一人分になる服を着ることで、パフォーマーは一人で新しい一人を演じることになり、一人で2人を演じることにもなる(東京 2005) Photo: Ritsuko Takizawa

コミュニケーションということにこだわり続けていながら、制作の中でアフリカの人の言葉を特に拾っていないのはなぜでしょうか?

言葉よりも、行う内容によってコミュニケーションを促していく。それが実行されたかどうか、ということの方が重要なんです。服を交換して、そこから仲良くなって会話をするということが重要なのではなくて、交換するということが二人の間に起こった、ということの方が重要なので、その後どうなろうが、あまり気にならないのです。多分、今は色々なコミュニケーションのモデルを捜している段階なんだと思うのです。コミュニケーションの型というか。それを色々と試しているという段階なので、それはそれでオッケーといいますか、目標達成しているのです。

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