ルカ・イェティ・バタグリア
PEOPLEText: Yukiko Oyama
ルカ・イェティ・バタグリアという風変わりなミドルネームを見た瞬間、きっと彼は面白い人物に違いないと思った。彼の作品からは、アナーキーでパンクなスピリットが伝わってくると同時に、描かれた題材一つ一つが持つであろう奥深い何かを感じた。カラス、オオカミ、六芒星、幾何学形等、百科事典の挿絵を彷彿させるそれらの謎めいたシンボルたちは、彼が描き出す世界を読み解く「カギ」なのだろう。彼の作品の背後にあるメッセージを解読すべく、インタビューを依頼した。
Photo: Cecilia Bianchi
まず、ルカ・“イェティ”・バタグリア(Luca “Yety” Battaglia)というとても面白いミドルネームについて聞かせて下さい。「イェティ (Yety)」は「雪男」という意味ですが、自分でこの名前を付けたのですか?それはなぜですか?
「Yety」という名前は、私自身が初めて自主制作したファンジン「Yety Society Threat」のタイトルに由来するものです。それはパンク、ハードコア、メタル音楽、ナイトスケーティング、スクワッター・カルチャー(廃墟に住みついたアナーキストたちが作り上げたムーブメント)、野生動物、斧、角、飲むことや笑えることについて扱ったものでした。また、私は以前に洞窟に住んでいたことがあり、自分自身が雪男のような生活をしていたという理由も関係しています。ですが、このニックネームはストリート・アートやタギングネームといったものではありません。
では、バックグラウンドを含め簡単に自己紹介をお願いします。
私は両親が建築家である家庭で育ったため、自然と幾何学的、建築的構造に感心を持つようになりました。それらは今、私の作品において不可欠な要素となっています。また両親はイラストレーション作品がいかに面白いものであるかを教えてくれました。それ以外にも建築学、解剖学、数学、古代東洋の工芸品、また密教や多神教のシンボル等からも強い影響を受けています。特に、素晴らしい技術を持った職人作品にはいつも魅せられています。彼らがどのような手法で、一貫した高い技術作品を作れるのということを研究するのは非常に興味深いものです。その他にも、イラストレーションやコンセプチュアルといった現代美術にも非常に感心があります。
ここ数年間、自身が聴き、演奏する音楽が持つビジュアル的要素に非常に魅せられています。そのため、 自分のバンド、また他のバンドのアルバムカバー、ポスター、Tシャツ等をシルクスクリーンのテクニックを用いて制作し始めました。また、最近自分アート作品制作と音楽活動の間にある関係性が明確になり、音楽から得たインスピレーションを元にイラストレーション作品を制作しようと試みています。
最後になりましたが、私は海を眺め、そして死について空想にふけることが好きです。そして私の頭の中には混沌と秩序が共存しているのです。
多くの作品は白と黒の二色で描かれていますが、それに特別な意味はあるのでしょうか?また、新しい作品では色を用いたものがありますが、何か理由があるのでしょうか?
私の白と黒に対する偏愛ともいえる強い色へのこだわりは、ドイツの印象派、80年代のハードコア音楽のフライヤー、ロシア人犯罪者達の刺青、古い百科事典の挿絵といったものから影響を受けています。白と黒は太く際立った線や形を描き出すことができますし、それによって私の作品をより力強く、印象的なものにしてくれます。また、私が頭の中でイメージを膨らませるとき、そのイメージはいつも白と黒の単色なので、他の色は使いません。このスタイルを変えてはいないものの、最近は水彩やアクリル絵の具を使ってペインティング作品を制作したりと新しい実験を試みています。
制作過程について教えて下さい。
私の全ての作品にはストーリーがあるので、作品を通していかにそれを伝えることができるかを模索しています。まず、自分自身が読んだ本や、見たものの中から興味を持ったことについて想像を膨らませ、その後自分のフィルターを通して頭の中で整理していきます。そして作品に対するアイディアがひらめき、それが強いコンセプトになったとき、写真やシンボル、形などのリサーチを始めます。またコンセプトをさらに発展させるために、それらに関連する写真を探します。このイメージを発展させる過程がもっとも難しく、時間がかかります。
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