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マット・コリショウ展「シューティング・スターズ」

HAPPENINGText: Aron Morel

ホーンチ・オブ・ヴェニソンにて、マット・コリショウの初個展が開催されている。
若手のブリティッシュアートシーンで一気に頭角を表し、ロイヤル・アカデミー・オブ・アートでの「センセーション」展に代表されるような数々の展覧会での経験を経たマット・コリショウ。これまで、彼の作品においては「遷移的な現実と想像の区別」というものにしばらく関心が置かれてきたが、本展で披露された新作でも、様々な媒体におけるこのような不安定で移り変わりの激しいイメージの本質に焦点が当てられている。

マット・コリショウ展

ギャラリーの一階では、アーノルト・ベックリンの有名な絵画「ザ・アイランド・オブ・ザ・デッド」に動きを与えた映像が展示されている。彼がこの絵に付け加えたのは、24時間その「島」を徘徊する怪しい影。それは、絵画越しの両面鏡に映り込んだ見る者の姿と交錯する。微かに動きを見せる絵画の放つ静寂と、見ている者の姿の平坦化すなわち「死」とが相まって、ひとつのフレームの同じコンテクストの中で錯綜した融合が生まれる。

マット・コリショウ展

彼は、その島に新しい命を吹き込もうと企てたが、依然それは我々の手の届かない所にあり、不可解なままだ。ベックリンの原画に存在する唯一の人物は消去され、代わりに隣のダゲレオタイプに移し替えられている。このダゲレオタイプとは、写真の原始的な手法の一つであり、鉄板の上に置かれたネガを使用する。この作品では、その鉄板を通り過ぎる際に自らの影が映り込むことでポジのように見える。両作品は、あるイメージにおける物質の欠陥に見ている者が作用する力、そして一瞬の個人の存在を映し出している。

マット・コリショウ展

二階では、インスタレーション「シューティング・スターズ」の展示が行われている。ビクトリア朝時代の幼い娼婦の写真と彼女達より年上のモデルを使って彼自身が再演した同じような写真が、部屋の壁に閃光のように映り込む。リン光を発する塗料が塗られた壁には、一時的に微かな少女達の像が残り、危険な仕事をする少女達の短い命を喚起する。子供達の搾取に訴えかける衝撃的な作品だ。彼は『女の子達は、これらの写真の記録の中にしか存在しない。多くの人々にとって、命の長さは、カメラのシャッターの露光時間と大して変わらないんだ』とコメントする。

マット・コリショウ展

ギャラリーの最上階には、ゾーエトロープの作品が展示されている。巧みな仕掛けによって高速で回転する多くの装飾を施された人形が、ストロボライトに照らされ、幻想的な動きを見せる。その人形の数は180もあり、中にはミノタウロス、三美神、オオカミ、智天使など神話的な人形も登場する。コリショウは、人間の発生のにおける機械化された行動について『私たちは、動物やロボットように繁殖しているが、それと同時に社会的な規範によって礼儀正しく振る舞うことを余儀なくされている』と言及している。

Mat Collishaw Exhibition
会期:2008年9月31日まで
時間:10:00〜18:00(木曜日19:00まで、土曜日17:00まで)
会場:Haunch Of Venison
住所:6 Haunch of Venison Yard, London W1K 5ES, UK
TEL:+44 (0)20 7495 5050
https://www.haunchofvenison.com

Text: Aron Morel
Translation: Tatsuhiko Akutsu
Photos: Aron Morel

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