デザイナーの京都議定書「THE DESIGNERS ACCORD」

THINGSText: YOSH

こんにちは!グリーンズのYOSHです。2008年は大統領選挙や金融危機など、未曾有の変化の年でしたね。まだ残すところ一月ありますが、洞爺湖サミットやオリンピックさえ、遠い過去のような気になるのが不思議です。よく耳にする京都議定書が、「約束期間」という実効フェーズに入ったのも実は今年の4月のこと。そしてデザイナーの世界でも、デザインの未来を左右するポジティブニュースが駆け巡りました。それが今回取り上げる、“デザインの京都議定書”こと「The Designers Accord」(以下、DA)です。

デザイン会社IDEOの幹部であるヴァレリー・ケイシーさんの個人的な一念発起から始まったDAは、一言で言えばサステナビリティに関するデザイナー同士のゆるやかな協定です。アドバイザーには、IDEOのCEOティム・ブラウン氏、グリーンデザインのキーパーソンであるコンサルタントのマーク・アルト氏(ニューヨークでお会いできました!)、社会起業家であり「自然資本の経済」の著者であるポール・ホーケン氏などが名を連ねています。(この組み合わせが既にミラクルですね。)

具体的には、いくつかのガイドラインを守ることを約束することで参加表明でき、こちらのデザイナーディレクトリにロゴマーク付きで掲載されます。ちなみに日本からはMARKUZデザインワークスの一社のみですが、いくつかのデザイン会社が興味を持ち始めているようです。そこでgreenzでは、12月に開催されるサステナブルデザイン国際会議「Destination 2024」でのセッションで取り上げるなど、日本での動きを広めていこうと思っています。ご興味のある方は、ぜひご連絡ください!

5つの約束

では、どんな約束を守らなければならないのでしょうか?さっそく、デザイン会社向けのガイドラインをみてみましょう。(翻訳は、岡本依子さんです)

1. 公に「The Designers Accord」への参加を宣言する。

2. 全てのクライアントと環境に対する影響について、また、代わりになる持続可能的方法についての対話を始める。環境に責任を持ったデザインや業務工程を支持するようなクライアント契約を再作成する。持続可能なデザインのための戦略的、そして、物質的な代替案を提供する

3. 持続可能性および持続可能なデザインに関して、あなたのチームを教育するプログラムに着手する。

4. 会社(オペレーションおよびクライアント業務を含む)の炭素/温室効果ガス・フットプリントを測定し、フットプリントを毎年縮小することを誓約する。

5. 持続可能なデザインのための共有の知識ベースに積極的に貢献することにより、デザインの視点から環境問題についての理解を深める。

ポイントを整理すると、(1)サステナビリティを軸に、デザインプロセスを考えること、(2)自社の環境におけるインパクトを測定し、縮小させること、(3)サステナビリティに関するノウハウを、会社の垣根を越えて共有すること、でしょうか。

(1)に関して、「クライアントとの契約を再作成する」という踏み込んだ内容を見たとき、ゾゾゾッと鳥肌がたったのを覚えています。タマゴが先かニワトリが先かの議論を飛び越えて、業界とデザイナーが一緒に変革していく。これはマークが特に強調していたことでした。確かに障壁の高そうなコミットメントですが、目に見える結果としてとても実行力があります。(2)はグリーンズでも計測してカーボンオフセットをしていますが、自分を知ることが足元を固めることにつながるでしょう。環境へのインパクトを知ることで、不可逆的に意識は変化します。その意味で、とっかかりの社内教育としても有効かもしれませんね。CO2に関しては、簡単に取り組める事例として、Carbon PASSのような電気代から計算できるウェブサイトが便利です。

Designers Accord
10月にローンチしたコミュニティサイト

そして、デザイン業界の新たなフェーズを予感させたのが(3)です。ちょうど10月にベータ版のウェブサイトがローンチし、さっそくIDEOとOXfamとの協働した「エシカル・コンシューミング」のコンセプトづくりや、同じくIDEOがAdobeと進めているサステナブルなパッケージなどのケーススタディが投稿されています。またフォーラムでは、「What are the most harmful consumer behaviors?」(もっとも害のある消費者の行動とは?)といった投げかけから、建設的な議論が行われているようです。

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