マテリノ(マテリアル・リ・イノベーション)展
7月18日〜31日の期間中、マテリノ・プロジェクトのこれまでの活動を一冊の本に収めた「MATE-RE-INNO—モノづくりで何を未来に繋ごう―」の発売を記念し、表参道ヒルズ「イデアフレイムス」内にて「マテリノ展」が開催された。
環境問題について、デザインはどのような関わりを持つことができるのだろうか。代表の岩本勝也氏は、空間デザイナーとして日本や世界のモノづくりの現場で仕事を続ける過程で、二つのことを感じたという。一つは「モノづくりでゴミづくりはしたくない」ということ。そしてもう一つは「同じモノづくりの分野にいて尊敬する現場の人たちの技術や知恵を途絶えさせたくない」ということ。そんな“骨太な”思いから、2004年レーベル クリエーターズは誕生した。
このレーベルクリエーターズのプロジェクトの一つが、今回の「マテリノ」だ。マテリノとは「マテリアル・リ・イノベーション」の略語。こだわり続けることで、不可避に生まれてしまう副産物である端材に、デザインの力で新たに価値を与え、その生産・流通の仕組みもデザインするというコンセプトだ。
端材と聞くと、四角や三角の角が粗い木のかけらが無造作に積まれている様子を連想するかもしれないが、Tシャツの端切れ、板金工場の装飾金物を抜いた後の抜け枠スチール、石材工場で石建材を切り出す際に出る余りの石など、その素材も形も様々だ。マテリノプロジェクトは、その中でも「上質な端材」に注目した。そんな選りすぐりの端材から、ハンドメイドで作られ生まれ変わったアイテムをいくつか紹介したいと思う。
京都の老舗鞄屋である信三郎帆布の工房で出る端材を利用して作られた「ORI」シリーズは、丈夫で適度な厚みがあり、鑞が塗装されていることから折ると形状記憶するという素材の特徴を生かして、折るだけで完成するように設計されている。素材の良さを最大限に生かした形で作られたアイテムは、使い込むほどに味が出て手になじむ造りだ。ボタンやチャックなどを使わないで、できるだけコストを抑え、お客さんが手の届きやすい価格に設定されているのも嬉しいところだ。
折る様子を丁寧に実演してくれるプロジェクトリーダーの熊谷氏の慣れた手付きからは、作り手のアイテム一つ一つへの愛着を感じた。端材だからといって妥協は一切ない。シンプルながら使い手のことがよく考えられた機能性豊かな仕上がりになっている。手作りだからこそ、端材だからこその親しみやすさや味わいを感じることができる。
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