「ペーストの詩人たち」展

HAPPENINGText: Katherine Lorimer

6月13日の金曜日、ブルックリン地区のブッシュウィックにあるアドホック・ギャラリーで「The Poets of the Paste」(ペーストの詩人たち)展が幕を開けた。このグループ展では、これまで壁に貼り残してきたオリジナル・イメージによって既に名の知れた、アームズロックエルボウトウガイアイミネント・ディザスターの4人のストリートアーティストを取り上げている。彼ら全てが現在ブルックリン在住というわけではないが、皆それぞれがこの地区の至る所の壁にその足跡を残してきたといえる。

ペーストの詩人たち

アドホックのディレクターであるアンドリュー・マイケルは、このグループ展のキュレーションをするにあたって主に木版やリノリウム版のプリントで知られている彼らは(アームズロックは例外であるが)、ストリートにあってスウーンと必要以上に関連付けることを打ち明けた。4人それぞれが、ある観点においてはスウーンと比較されてきたのは、彼らが今歩んでいる道すじに、彼女自身が輝かしい足跡を残しているという事実に因を見つけることができ、致し方ないかもしれない。しかしながら、アンドリューと同様に、そこで私は考える。類似性や独創性の指摘は、単に細部へ対する関心の低さからくるものではないかと。アンドリューの試みは、この素晴らしい展示会という形で成功を収めた。そして、そのほとんどがオープニング以前に売約されたことも付け足しておこう。4人のアーティスト全員が新しい挑戦に歩みを進め、分類や決めつけを拒み、そして期待以上のものを届けてくれた。この「Poets of the Paste」の主題に相応しく、また、そこに収まりきれない才能を示していることを疑う余地はない。彼らの作品が、ニューヨークに限らず、この先大いに取り上げられていくのは当然のことであろう。

Poets of the Paste
Elbow-Toe

今回の展示で、ベテランのストリートアーティスト、エルボウトウは、鳥の群れやその歴史や社会へ対する影響に焦点を当てた。参考にした物は多岐に渡る。ギリシャ神話(イカロスとヘルメス)、20世紀ダンス(ピナ・バウシュ)、伝記(ライト兄弟)という異なったソースからそれぞれ取り上げている。その作品は木材、紙、ペイントのレイヤーから成り立っているだけに終わらず、隠された意味をもそのレイヤーから読み取ることができる。ディスプレーされた木版画は、特にこの大きなサイズで彼のその卓越した技術力を見せつけている。

Poets of the Paste
Imminent Disaster

そしてまた、その作品のサイズと込められた意味で強い印象を与えているのは、彼女初の展示となるイミネント・ディザスターによる作品。自身の主題として、彼女はニューヨーク市を描く。リノリウム版画のポートレートをベースに、出版物から史実に残る物語を探っていく。彼女の特徴はー狂ったオルガン奏者が彼自身の火葬用の薪を前にオルガンを演奏している良い例ーそれ自体が歴史上の重要人物ではないが、他の時代からの彼女への問いかけを上手に版画に組み込んでいる。ビクトリア調のイメージを器用なカッティングで形にして、イミネント・ディザスターは、暗くそして力強い雰囲気の調和に成功している。

Poets of the Paste
Gaia

付けた値段もさることながら、彼の最新かつ最大級であろうリノリウム版画をキャンバスいっぱいに拡げ、加えてかなり踏み込んだプライベートな姿を油彩画の作品で届けてくれたのがガイアである。ストリートでは動物をモチーフに描く自身とは一線を画しながら、肖像画のスキルを披露する機会となったようだ。これを挑発的な意図と捉えるのであれば、裸の上半身を自分を愛撫する若者の、この目を惹くダブル・ポートレートはきっと琴線に触れることだろう。

Poets of the Paste
Armsrock

そして最後も見逃せない。アームズロックからは、紙と厚紙を使った並外れたジオラマのセレクションと大型のキャンバス作品が数枚届いた。他のアーティストと違い、彼はオリジナル作品に重きを置いて、印刷というかたちを控えている。彼のキャンバスにはマスクを被った革命児や「no chain of command」(指揮系統の崩壊)や「no gods no masters」(神々や支配者の否定)といった標語が踊る。描かれた彼らは、恐怖、疎外感や孤独感といったテーマに立ち向かいながら、現代社会における個の存在に対する問い掛けを続けている。

Poets of the Paste
会期:2008年6月13日(金)〜7月13日(日)
時間:13:00〜20:00(月・火曜日休み)
会場:Ad Hoc Art Gallery
住所:49 Bogart Street, Brooklyn, NY 11206
TEL:+1 718 366 2466
https://www.adhocart.org

Text: Katherine Lorimer
Translation: Yoshitaka Futakawa
Photos: Katherine Lorimer

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