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ヤノベケンジ

PEOPLEText: Kyoko Tachibana

インスタレーション作品では、「小さな森の映画館」ならぬ「宮の森の映画館」も展示され、ヤノベ氏のお父様とトらやんとの腹話術短編映画が公開されており、楽しくもどこか切ないポーランド語での『森へ行きましょう』と原爆のキノコ雲の映像をバックに、二役の絶妙な掛け合いが繰り広げられる。

ヤノベケンジ

ヤノベ氏は以前、実際に装着したり乗って動かしたりできる大型の機械彫刻作品を数多く手がけていた。しかし、チェルノブイリでの体験や国内外での社会的変動、プライベートでもお子さんが生まれたりしたことがきっかけで、制作のテーマがそれまで「サバイバル」だったのに対し、「リバイバル」へと変化している。近年では、子供参加型のワークショップなども展開し、生存する事のみならず、未来を見据えた「再生」や「復活」をテーマにポジティブな方向性をもって活動を行っている。

ヤノベケンジ
© ヤノベケンジ

ヤノベケンジの原点が大阪万博跡地ということはよく知られた話だが、彼の北海道とのつながりの原点も、実は大阪万博にあった。万博で赤軍と記したヘルメットをかぶって太陽の塔に篭城した「目玉の男」を探しに、ヤノベ氏は北海道まで来ていたのだ。今でも唯一現存する太陽の塔は、時間を駆け上がって未来へと放たれる出口をイメージして作られたものだったのだが、今はコンクリートで塗り固められてしまっている。

ヤノベケンジ

『僕はその目玉の男こそが、その未来への出口から突破することに成功した唯一の人なのではないかと思ったのです。それで、その人を探すために旭川まで行ったんです。』そして奇跡的にも、旭川でその「目玉の男」に出会うことができたのだそうだ。今回の北海道での個展は、そんな意味でもヤノベ氏にとっては物語の延長であり、実は今回の北海道特別エピソード「トらやん雪の街へ」編にも、この「男」が登場する。

今後の活動は、9月25日から中国でも日本人作家によるグループ展に参加するとのこと。経済発展やエネルギー問題などで何かと注目を集め、オリンピックや万博なども計画されている中国で、ヤノベ氏がどのように制作を展開させていくのか、またそれが中国ではどう映るのか、今後も注目したい。

ヤノベケンジ展「トらやんの大冒険」
会期:2007年9月7日〜10月8日
時間:11:00〜19:00(月曜日休館)
会場:札幌宮の森美術館
住所:札幌市中央区宮の森2条11-2-1 宮の森ミュージアム・ガーデン内
観覧料:一般 400円、高大生 300円
TEL:011-612-3562
企画協力:Akio Nagasawa Publishing
主催:札幌宮の森美術館
https://www.miyanomori-art.jp

Text: Kyoko Tachibana
Photos: Kyoko Tachibana
Additional Photos: Courtesy of Miyanomori Art Museum © Kenji Yanobe

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