エルヴィン・ヴァーゲンホーファー「WE FEED THE WORLD(ありあまるごちそう)」

HAPPENINGText: Christina Merl

映画「We Feed the World」は、数セクションに分かれる。「何故トマトはトマトの味がしないのか?」、「スイスの小麦80%を生産しているインド国民が、栄養不良に見舞われているのをどう説明するのか?」など、頭を悩ませる問題がセクション別に細かく描かれ、それぞれブルターニュに漁師、東ヨーロッパの交配種の使用、ブラジルでの大豆生産、そして世界的食品会社の一つ、スイス、ネスレ社を映し出す。取材を受けた人の中で、ネスレ社CEOでオーストリア人であるピーター・ブラベック・レッツマットはインタビュー中、自社について話し、西洋社会は食糧というものをどのように取り扱っているか見解を述べている。

国連の食糧担当官にも取材し、本作品で取り上げている諸問題は、マイナスの影響も含め、世界中の人へどう影響しているのか、映画の中で随所にその見解が挟まれている。とりわけドキュメンタリー作品に出演するような事のない人への取材インタビューを、どのように行ったのか質問された際、ヴァーゲンホーファー監督は、最初は絶対にカメラは持って行かないよ、と答えている。相手をからかおうとしているわけではないことが明らかになり、最終的に撮影を承諾するまで、実際、彼は1度と言わず、4、5回はカメラを持たずに取材のアプローチを行うのだ。

この映画を見ると、我々が口にしている食べ物はどこでどうやって作られているか、この産業化社会で、実に大量の食糧が生産され、また捨てられてもいるのに、何故多くの人が世界中で飢餓に苦しまざるを得ないのかを考えさせられる。言いかえれば、映画「We Feed the World」は、自分達は体系の一部であり、もし何かを変えたいと切望するなら、それはまさに我々次第なのだと教唆している。

We Feed the World
監督:エルヴィン・ヴァーゲンホーファー
仕様:オーストリア、2005年、1時間36分
言語:ドイツ語、ポルトガル語、フランス語
https://www.we-feed-the-world.at

Text: Christina Merl
Translation: Mona (Mam-Can)
Photos: Courtesy of Allegro Film

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