トーマス・キャンベル「スプラウト」プレミア上映

HAPPENINGText: Mark Buswell

曲が終わると、キャンベルが「スプラウト」の簡単な紹介をし、照明が落とされた。シートは満席でやむなく劇場の階段に座って映画を観る事になってしまったのだが、軽快に波を滑っていく美しい映像には目を見張った。太陽の光が水しぶきの中で輝き、サーファーが波に乗りながらカメラに向かって滑ってくる。そして私達はその中に吸い込まれてしまう。その映像は明るく、澄んでいて、美しい。

ただ僕が何か足りないと感じたのは、内容だ。キャンベルによる映画上映前の簡単な紹介のなかで、この映画はロングボーダーとショートボーダーのあいだに存在する壁を取り除き、人として海を楽しめることを祝福し、あらゆる方法を使って水の近くに身を置く、ということを描いたものだと語った。実際観てみると、もちろんこの要素に触れてはいるが、それらがこの映画の本質だとは思わない。

私がこの映画から得た印象は、彼がした紹介とはあまり重ならない。この映画は、ちょっと面白い無表情なモノローグが織り込まれながら、フィルムクリップと素晴らしい音楽が美しく一つにまとめられたアルバムのようだ。そして、まさしくここが論議の的になるところだとも思う。

サーファーは、これは “アートフィルムではない” と主張するだろうし、アーティストは、“サーフィンを題材にしたアートフィルム” だと言うだろう。アートフィルムとして考えると、(この主張は簡単に曲げるわけにはいかない。事実、トーマス・キャンベルは今日最も認められているアーティストの一人だからだ。)波に向かってパドリングはしているが、立ち上がるほど強くはない。しかしサーフィン映画として考えると、良い作品と言えるし僕の期待を満たしてもくれた。もし自分にDVDライブラリーなるものがあれば、そのリストに加えたいとも思う。

なにはともあれ、この映画はお勧めです!

Thomas Campbell “Sprout” Premiere
日時:2004年9月17日(金)、18日(土)
会場:Victoria Theatre
住所:2961 16th St, San Francisco, CA 94103
TEL:+1 415 86 7576
https://www.trimyourlifeaway.com

Text: Mark Buswell
Translation: Naoko Fukushi
Photos: Mark Buswell

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