ソナー 2004

HAPPENINGText: Peta Jenkin

実験的な映像と音楽のプログラムが行われている「ソナー・ホール」で、私がほんの少し見たのは、夢のように繊細な質感と抽象的で雰囲気のあるサウンドトラックとが織り成す、SESAM-Oというアーティストの作品だ。薄暗い会場で音と映像にしばらく浸るのはとても心地良かった。


SonarHall

夜に「アティチュード」というオーディオビジュアルのライブパフォーマンスが行われる「ソナーラマ」まで、またランブラス通りをぶらぶらと歩きながら戻った「アティチュード」は、3人のVJグループによる、政治、具体的にはメディアと性別をテーマにした作品のプログラムだ。VJパフォーマンスは、2つのカテゴリーに分けられていたようで、一つは映像や前もって用意してあるアニメーション素材をミックスするのにソフトウェアを使うものと、音などに反応して、リアルタイムでグラフィックを生成するプログラミングを使うものだ。


Santofile

一番最初のアーティストは、サントフィルというスペインで活動するアーティスト。目がくらむような冷戦期のプロパガンダやスローガンのイメージのミックスを、鈍いノイズが折り重なる音と共にみせる。3面からなるスクリーンが、3つの映像を同時に動かすことを可能にしていた。例えばこのパフォーマンスでは、左のスクリーンには箱の中に文字が入ったインタラクティブ・インターフェイスがあり、その中から文字が選ばれ、中心のスクリーンでそれがその場でミックスされていく。戦争の残忍で冷酷な映像とメディア・プロパガンダが、政府によるメディア・コントロールの危険さを強調していた。同じような映像とランダムに現れる文字が何度も繰り返されるのをしばらく見ていると、少しうんざりしてしまった。

「ソナーラマ」の会場にいる人達が、次のプログラムのために準備して時間通りに来ている人はいないと思っていたのだが、次のVJグループ、GIRLSWHOLIKEPORNO(ポルノが好きな女の子達)は違ったようだ。このグループは、バルセロナで活動する、メンバーが全員女性というVJグループで、多くのソナー来場者を惹き付けていた。彼女達のパフォーマンスが始まる前、気付いたらいつの間にか会場には沢山の人(ほとんどは男!)が集まっていた。挑発的なタイトルだったので、無理もない。

彼女達は、ファンキーでエレクトロな音楽と共に、3面スクリーンそれぞれに異なる映像を映しながらエネルギッシュにスタートを切った。裸の女性、日本のアニメのような女の子、白黒モザイクのポルノ映像などが、すごいスピードでミックスされていく。このパフォーマンスの後、彼女達と話をする機会があったのだが、目指しているものは、女性向けのメディアとしてのポルノを作ることだそうだ。


girlswholikeporno

パフォーマンスが半分を過ぎた頃、黒のオーバーオールとサングラスを身に付けた4人目のメンバーが、マイクを片手に歌いながらステージに登場した。このグループのMCのようだ。すると彼女はストリップショーを始め、ついにはサングラス以外全て脱いでしまった!

普通のオーディオビジュアル・パフォーマンスとして始まったはずなのに、この時になるとオーディエンスはもう、拍手喝采する人がいれば、立ち上がって激しく踊る人がいてちょっと狂気さえ感じるほど。とてもおもしろ楽しい、エネルギーとユーモアに溢れた新鮮なパフォーマンスだった。

最後のプログラムは、VJウバーギークとDJドナ・マヤの音楽による「サイバー・スペース・ランド」というパフォーマンス。ウバーギークはステージで、まるで楽器のようにコンピューターのキーボードを使い、ラップトップの前にぼんやりした姿が浮かぶという見慣れた光景から始まった。


Ubergeek

オンラインの検索エンジンで入力された言葉でテキストが動く。無数のテキストのレイヤーが美しく重なり、神秘的でもあった。そしてウェブカルチャーで使われている言語や、人がどんな言葉で検索しているのかが見られるというのも興味深い点だ。

内容がぎっしりの、ソナー・アートセクションの1日目、オーディオビジュアルのコンサートが終わる頃には、私はもうくたくたになってしまっていた。しかも、ウバーギークのプレゼンテーションに長居しすぎて、坂本龍一とパンソニックによるコンサートに遅れてしまった。これを見逃したのはとても悔しかったが、気付けば何時間も食事をとっていなかった。深夜には、ラズマタズ・クラブという場所でプレスパーティーがあり、コンサートを逃した分、ルーツ・マヌーバなどの素晴らしいライブを楽しんだ。

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