ブロック・プロジェクト
昨年、社会・経済的な危機だけではなく、政治的にも危機に陥ったブエノス・アイレスは、今では特別な存在感を放つ街だ。この状況によって、落胆の色を隠せない人もいれば、街から姿を消し、他の国に移住した人もいるほどだ。しかしそのような状況の下でも、頭を使って何かを作り上げようとする人もいる。結果的にそういった動きはアートへとつながり、それはまさに、ホームメイドのアートと言えるだろう。そしてそれらは、見事に素晴らしい作品ばかりだ。
ブエノス・アイレスでは昨年から、十代や二十代の若者が一丸となり、アートを作り上げる動きが見受けられるようになった。そのほとんど全ては、かつては個人で制作活動をしていた友達同士が結束して、グループになったものばかりだ。ライターだった者。ミュージシャンだった者。画家、写真家、そして、ジャンルは問わず、自分の感じたものをそのまま作品として表現していた者と、実に様々だ。
『友人達の作品を見て、素直にいいものばかりだなと思いました。当時の私の仕事は、全てのものに適応するようなフォーマットを作ること。そういった受け身的なものよりも、何かリアルなものを作りたいと思ったのです』と、一人の若者は語ってくれた。多くの人に、彼らの作品を安く、そして簡単に知ってもらう方法は何か?それこそ、インターネットだ。そして現在のウェブには、ホームメイド感が感じられる作品があまりない。その点に彼らは目をつけ、みんなをちょっと幸せにできる作品を制作しているのである。
スペイン語で「政治的に間違ったジョークの方法」という意味を持つ「ソルナ」という言葉をグループ名にした集団がいる。彼らのサイトに行ってみると「脱線したアート」を作り上げるのが僕達のスタイル、と気持ちいいほどばっさりと主張されていた。また、出版物を通じての自己主張を希望する読者とのコラボレーションを高めて行きたい、というのも彼らの目的の一つだ。
ソルナはまた、ブロック・プロジェクトの主催者でもある。『アイディアは特に、ビジョンとか、何か重要なことを言いたいといった使命感みたいなものが基本にはなっていません。まず僕達がやるべきことは、とにかく何かを作り上げること。それができたら、世界中の人が見ることができ、表現の場としては格安のウェブの特典を利用させてもらっている、といった状態です。目的があれば、危険や冒険がメインキャラクターにもなり得ます。もちろん、見ている人たちからのリアクションもある程度期待できます。ウェブで作品を紹介するからには、写真館的なサイトや、ただポートフォリオを発表したり、全部をフラッシュ作品で埋めるような形にはしたくないという気持ちはありましたね。冒険的で、古風、アマチュア感が残り、特に際立った特徴がないサイトこそ、僕らが求めているものです』と語ってくれたのは、ソルナのメンバーの一人でもある、ユアン・イグナシオだ。
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