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ブロック・プロジェクト

HAPPENINGText: Gisella Lifchitz

ちょっと上質な本を、ふかふかのソファーの上で読んでいるような、そんな気分にさせてくれるこのブロック・プロジェクト。一冊で、読むことも、写真を見ることも、そして落ち着いたデザインを楽しむことができるプロジェクトだ。肩ひじをはらずに、すんなりと受け入れることのできるアートだ。

文学的な雑誌を読むという行為は、思った以上に行動に移すのが難しかったりする。これはおそらく、普段は聞き慣れない言葉や、今まで知る由もなかった作者や本に関する参考文献が点在するはてしなく長い文章に、私達自身が親しんでいないからだ。文学雑誌には、雑誌と読者の間に大きな距離があることもまた揺るぎない事実だ。それを証拠に、現在ブエノス・アイレスの書店で扱われている文学雑誌の数はたったの2誌。しかしそれらを買って読む人の多くは、実のところ、あまり詳しくは内容を理解していないのではないだろうか。それは、その雑誌自体がちょっと風変わりな人の手によって制作されているからである。

デセス・デ」は、人々を理解する人達によって制作されている、他とはひと味違う雑誌。「多くは決して望まないのに、多くを手に入れてしまう人」について紹介するのが、この雑誌のスローガンだ。これこそ、小さな事柄、シンプルなデザインに注目し、控えめに読者との関係を築くという、彼らの核的な哲学に沿ったものだ。

短編のストーリーを読んだり、色鮮やかな色彩に目を奪われたりしているうちに、読者は自分自身もそれぞれの題材(フリー、チョイス、プレジャー、ランナウェイ等)に参加していることに気付く。後味の良いセンスと共に、まるで雑誌自体がアートとコミュニケーションを取っているかのようなのである。『お互いを理解するというのが、私が最初に選んだすべきことです。グループになって何かについて議論を交わし、一緒に笑うことこそ全て。選択肢(チョイス)についても話し合うことだってあります。』とは、チョイス担当記者の言葉。そして彼らは、それら全てを現実のものとしているのだ。

今回御紹介したのは、全て2001年から今日までに発生した出来事。多くの人がこんな所からは離れたいと思っている国で、一部の人たちは、何でもいいから何かを作り出すことこそ、この状況を打破できる方法だということに気付いたのだ。その結果誕生したのが、フレンドリーで気軽な新しい種類のアート。無名であっても、新しい世代による新しいアートはいつでも大歓迎だ。そして彼らは特別な存在ではなく、そこら辺にいるような、私達とあまり変わりない若者なのだ。

Text: Gisella Lifchitz
Translation: Sachiko Kurashina

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